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画素数が多い方がきれいな写真は撮れますか?
【質問】
デジカメを買いたいと思っています。せっかくなので、できるだけきれいに撮れるカメラを選びたいのですが、画素数が多い方がきれいに撮れると考えて良いのでしょうか?
【回答】
デジタルカメラの描写力は、
イメージセンサー
とレンズ、
画像処理エンジン
の3つによって決まります。たとえば、とてもよいイメージセンサーであったとしても、レンズの力が十分でなければきれいな画像になりませんし、画像処理エンジンの性能が今一つであった場合も同様です。画素数が多いというのは、描写性能を決める一要素であるイメージセンサーの、さらに一つの性能ですので、これだけで単純に画質の良し悪しを判断することはできません。ニコンの
フラグシップデジタル一眼レフD4
の有効画素数が1620万画素に対し、同じくニコンのコンパクトカメラ
COOLPIX S8200
では1610万画素とほぼ同等ですが、この両機種の描写性能を比較すれば、やはりD4の方が圧倒的に高くなることを見ても、画素数だけで描写力は決まらないことがわかると思います。
描写力は、イメージセンサーの一要素である画素数だけでは決まらない。
とはいえ、画素数は描写性能を決める大切な要素であることも確かです。ちょっと前までは、デジタルカメラの画素数競争が繰り広げられたのも、一般的に画素数が多い方が解像力をはじめ描写性能が高くなったからです。それでは、最近は画素数が多くなるテンポが遅くなっているのはなぜでしょうか?
第一の理由は、画素数の増大が光学的な限界に近づいており、描写性能の向上につながりにくくなってきたということです。絞りF2.8では530本/mm、F1.4では1057本/mmが光学的な解像力限界(詳細は「
レンズの絞りは絞るほど画像は鮮明になりますか?
」をご参照ください。)となります。ここから計算すると、理論上の理想的な状態でも、フルサイズでF2.8の解像力を活かすには最大で10億画素、F1.4では40億画素程度が限界となります。
センサー名称
センサーサイズ
(mm)
F1.4
(M画素)
F2.0
(M画素)
F2.8
(M画素)
F4.0
(M画素)
F5.6
(M画素)
F8.0
(M画素)
F11.0
(M画素)
フルサイズ
36X24
3861
1918
960
481
239
120
60
APS-C
23.4X16.7
1746
868
434
217
108
54
27
フォーサーズ
17.3X13
1005
499
250
125
62
31
16
1型
13.2X8.8
519
258
129
65
32
16
8
1/1.7型
7.6X5.7
194
96
48
24
12
6
3
1/2.3型
6.2X4.6
127
63
32
16
8
4
2
サイズの小さいイメージセンサーでは、画素ピッチが狭くなるため、さらに限界値は低くなります。高級コンパクトに使われている1/1.7型センサーでは、F2.8で4800万画素、F1.4では2億画素が理論限界値となり、一般的なコンパクトカメラの1/2.3型センサーでは、F4.0で1600万画素、F2.8で3200万画素、F1.4では1億2700万画素が理論限界値となります。
市販されているデジタルカメラの画素数とレンズをみると、コンパクトカメラではすでに限界値に近づいていることがわかります。
なお、絞りF8.0の限界解像力は186本/mmとなり、フルサイズのセンサーでも1億2000万画素が限界となります。
ニコンのD800
は3630万画素ですので、このサイズでもそろそろ光学的な限界に近づいてきたと言えるかもしれません。
イメージセンサーの画素数は、光学的な限界値に近づいている。
高画素化の勢いが鈍化している第二の理由として、周辺部分への負荷が大きくなっているということもあります。画素数が多くなればなるほど、画像処理の負荷も大きくなり、バッファーメモリーや記録部分も大容量化が必要となります。また、イメージセンサーの解像力が高まれば、レンズの解像力もより高いものが求められます。たとえば、1000万画素から2000万画素へ高画素化すると、画像処理エンジンを2倍に高速化しないと連写速度が低下します。バッファーメモリーも2倍に増やさないと連続撮影枚数が低下します。レンズの解像力も√2倍にしないと、イメージセンサーの解像力を無駄にすることになります。
理由の第三は、製造コストの問題です。イメージセンサーは半導体でできており、半導体のコストは基本的には面積によって決まります。しかし、高画素になればなるほど微細な製造プロセスが求められるため、当然製造コストも増大していきます。以前のように、画素数の向上が描写性能の向上に直結しなくなってくると、費用対効果の面で採用が難しくなります。また、第二の理由でも記載しましたとおり、イメージセンサー部分以外のコスト増大にも対応する必要があります。
ニコン COOLPIX P310
(1/2.3型16.1メガ画素)と
COOLPIX P7700
(1/1.7型12.2メガ画素)。
画素数はP310の方が多いが、実際の解像感はP7700の方が高い。※いずれも広角端で絞り開放時。
最後に、高画素化によるメリットとデメリットを整理すると、次のようになります。
【高画素化のメリット】
解像力が向上する可能性があり、より高精細な画像を得られる。(→光学性能の理論的限界を超えないこと、レンズや画像処理エンジンの進化が伴うこと、が必要。)
解像力が向上する可能性があり、トリミングなどの自由度が高まる。(→光学性能の理論的限界を超えないこと、レンズや画像処理エンジンの進化が伴うこと、が必要。)
【高画素化のデメリット】
個々の画素面積が小さくなるため、高感度性能にマイナスの影響がある。(→イメージセンサー等の基盤技術の進化により、カバーできる場合もある。)
個々の画素面積が小さくなるため、ダイナミックレンジにマイナスの影響がある。(→イメージセンサー等の基盤技術の進化により、カバーできる場合もある。)
画像データが大きくなるため、連写性能などカメラのパフォーマンスにマイナスの影響がある。(→画像処理エンジンの進化により、カバーできる場合もある。)
画像データが大きくなるため、記録できる枚数にマイナスの影響がある。(→メモリーカードの大容量化により、カバーできる場合もある。)
もしコンパクトカメラの購入を検討されているのであれば、画素数にはあまりこだわらずに、レンズやボディ等を重視されると良いと思います。また、レンズ交換式カメラにおいては、まだ高画素化による描写力向上の余地があると言えますが、画素数だけに注目するのではなく、レンズを含めたシステム全体で考えることをお勧めします。
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