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特集 シグマ DP1x
1.シグマ DP1xの位置づけと概要 |
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シグマ DP1x
by Inaba Kunio
ドットをドットのまま記録するカメラ
評価:5.0
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ドットをドットのまま記録するカメラ〜シグマDP1xシグマDPシリーズの特長は、大型のFOVEONダイレクトイメージセンサーと描写力重視の単焦点レンズを搭載した高級コンパクトカメラ、と一言でまとめることができる。発表された2007年、大きなインパクトを持って受け止められたことは、記憶に新しい。私も発表と同時に初代DP1を予約した一人である。2008年3月当時、10万円弱の実売価格であったものの、それほど「高い」という印象もなかった。デジタル一眼レフで標準的なAPS-Cサイズに準じた大型センサー、しかも唯一無二の非ベイヤー方式を搭載したカメラであり、おそらくメーカーとしても値付には様々な迷いもあったことが推察される。 ベイヤー方式とは、Kodakの技術者Bryce Bayer(ちなみにドイツ語読みではバイエルとなる)氏が考察した方式で、色の識別能力のないイメージセンサーの各画素に赤(R)、青(B)、緑(G)のカラーフィルターをかぶせ、色分解を行うものである。各画素では一つの色しか識別できないため、画像処理エンジンが周辺の画素情報とあわせて補間処理を行う。被写体に規則的な模様があると、この処理過程で色モアレが発生しやすくなるため、ローパスフィルターによってイメージをぼかす必要があった。当然、このことは解像感の低下につながる。 FOVEON方式のイメージセンサーでは、一つの画素でRGBの色分解が可能である。そのため、色モアレ防止のためのローパスフィルターは不要となるため、レンズから受光した光はそのままイメージセンサーに導かれる。つまり、FOVEONセンサーは被写体のドットをドットのままで記録するため、画素数が少なくても解像感のある画像データを生み出すことができる。DP1xに搭載されているセンサー画素数は468万画素であるが、シグマが有効1406万画素と称しているのは、各画素がベイヤー方式の画素の3倍(RGB)分の情報を取得できる、という考えからである。 DP1x〜熟成した三代目の特長下記の表は、2008年3月に登場したDP1から、2010年9月発売のDP1xまでの三代にわたるDP1シリーズの仕様を比較したものである。これを見ると、少なくともハードウェア的には見事に変わっていないことがわかる。ボタンやレンズコーティングなどブラッシュアップされている部分もあるものの、外観的にもほとんど同じである。DP1からDP1sへの大きな変化は、レンズコーティングを改良することによって太陽などの強い光源を画面内に入れた時に発生しやすかった規則的な斑紋が抑えられている点である。また、デジタルズームボタンにQS(クイックセット)メニューを追加することで、ISO感度やホワイトバランスなどをダイレクトに操作できるようになった。 なお、DP1s発売と同時にDP1の新ファームウェアも発表され、ISO50の設定が可能になるなど、DP1もDP1sに準じた機能にアップデートされている。 DP1sからDP1xへの変化は、画像処理エンジンと操作系のブラッシュアップである。画像処理エンジンとして、新たにTRUE IIが搭載されたことにより、特にオートフォーカススピードが格段に高速化された。また、DP1sで搭載されたQS機能用にQSボタンが新設されるとともに、ボタン機能が印字されたことで視認性が格段に向上している。 また、2011年7月にはDP1x用の新ファームウェアも登場し、RAWとJPEGの同時記録ができるようになったり、オートフォーカススピードがさらに高速化されるなど、最近の高級コンパクトカメラとしてやや見劣りがしていた部分にも手が入れられた。
2012年2月に開催されたCP+2012では、DP1シリーズの後継機として、DP1Merrillも発表された。今までのDP1にはSD15と同じセンサーが搭載されていたが、MerillシリーズにはSD1と同じ1536万画素センサーへと強化されるとともに、レンズの開放F値もF4.0からF2.8へと1段分明るくなっている。 これからのシグマの新たな展開を確認するためにも、DP1シリーズ第一陣の完成形であるDP1xを詳細にチェックしたい。
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