【一口コラム】動画撮影にも対応した新世代の中判一眼レフ
リコーから、ペンタックスブランドの新しい中判デジタル一眼レフ、645Zが正式発表となりました。CP+2014でも展示されていたものですが、思っていたよりも早い段階での正式リリースになったように思います。645Zの位置づけは、2010年6月に登場した645Dの上位機ですが、実質的には645Dの後継機となるように思います。
2010年6月に登場したPENTAX 645D。なお、「カメラグランプリ2011大賞・受賞記念モデル」として、外装に漆仕上げを施した特別モデル「PENTAX 645D japan」も2011年7月にリリースされました。期間限定での受注商品で、概ね120万円程度でした。
まずは、645Zの特長について、主なポイントを見てみたいと思います。
- イメージセンサーは、645Dの有効4000万画素CCDから有効5140万画素CMOSへと高画素化されましたが、サイズは44x33mmから43.8x32.8mmへと僅かながら小さくなりました。なお、フィルムカメラの中判サイズ(645版)は、55.1x42mmですので、それと比較すると概ね6割強となりますが、それでも35mmフルサイズの約1.7倍の大きさとなります。
- センサーがCCDからCMOSに変わったこともあり、ライブビュー撮影や動画撮影も可能になりました。最大で60iのフルHDの撮影が可能です。ステレオマイクも内蔵しています。
- 画像処理エンジンはK-3と同じPRIME IIIを搭載しており、645Dと比べると最大5倍の処理速度となったようです。ISO感度も高感度側ではISO204800まで拡張されました。(645Dでは拡張設定でISO1600まで。)なお、K-3ではISO51200までですが、これは個々の画素サイズの大きさの違いも影響していると思われます。
- レンズ補正機能も強化されました。645Dの歪曲収差、倍率色収差に加えて、周辺光量、回析補正にも対応しています。また、RAWからの現像時にはフリンジ補正機能も搭載されました。
- 連写性能が強化され、1.1コマ/秒から3コマ/秒になりました。連続撮影枚数は、RAWで13コマが10コマに減少していますが、連写速度を645D並みの1コマ/秒にすると25コマまで可能となるようです。
- AFセンサーモジュールがK-3と同じSAFOX 11に進化したことで、27点の測距点に対応しています。また、測距可能な輝度もEV-3まで拡張されました。
- メモリーカードはデュアルスロットを引き続き搭載しています。SDXCにも対応しました。
- 液晶モニターはペンタックスのデジタル一眼レフでは初となるチルト可動に対応しました。下方向に35°、上方向には125°までチルトします。
- アルミダイキャスト製シャシー、マグネシウム合金製ボディ、防塵防滴構造、-10℃までの耐寒性能も引き続き搭載しています。
- Wi-Fiは搭載していませんが、無線LAN機能を内蔵したオプションのFLUカードO-FC1を装着することで、スマートフォン等でのリモート操作も可能です。
- 外部接続端子には、HDMIとともにUSB3.0が設けられています。
- ボディサイズはほぼ同じで、重さは70gほど増しています。
645Z(左側)と645D(右側)。基本的なボディデザインは似ていますが、PENTAXのロゴの入ったパネルが変更されています。
645Z(左側)と645D(右側)。液晶モニターはどちらも3型ですが、92万ドットから104万ドットに変わるとともに、アスペクト比も4:3から3:2に変わりました。なお、イメージセンサーのアスペクト比はどちらも4:3です。液晶モニターが上下方向のチルト可動に対応したことで、ボタン類の配置も変わっていますが、基本的なインターフェースは踏襲されています。
645Z(左側)と645D(右側)。ボディ上面のデザインも共通しており、大型の液晶パネルが置かれています。モードダイヤルではユーザー設定項目が3つに増えています。また、動画撮影に対応したことで、ステレオマイクも内蔵されました。
【ペンタックス645Zと645Dの比較】
機種名 |

645Z |

645D |
イメージ
センサー |
有効5140万画素
43.8 x 32.8 mm |
有効4000万画素
44 x 33 mm |
画像処理
エンジン |
PRIME III |
PRIME II |
マウント |
ペンタックス645マウント |
ISO感度 静止画 |
ISO100-204800 |
ISO200-1000 拡張時ISO1600 |
オート
フォーカス |
SAFOX 11 27点の測距点、うち25点はクロスセンサー |
SAFOX IX+ 11点の測距点、うち9点はクロスセンサー |
シャッター
スピード |
30-1/4000秒 |
ファインダー |
トラピゾイドプリズム
98% 0.85倍 |
液晶モニター |
3型103.7万ドット
チルト可動 |
3型92万ドット |
連写速度 |
3コマ/秒 |
1.1コマ/秒 |
動画撮影 |
1920x1080(60i) |
- |
バッテリー |
D-LI90P
650コマ |
D-LI90P
800コマ |
サイズ
(W x H x D) |
156×117×123 mm |
156×117×119 mm |
重さ |
1550g/1470g |
1480g/1400g |
今回のポイントの一つは実売価格です。2010年5月に登場した645Dは90万円弱でのスタートでしたが、645Zは80万円弱と、概ね10万円程度安価となりそうです。描写性能や機能面を大幅に強化した「上位モデル」であるにもかかわらず、フラグシップのデジタル一眼レフに価格を一歩近づけたことにより、新たな市場拡大にもつながるように思います。また、他社からリリースされている中判サイズのカメラやデジタルバックも、価格面でも検討が必要になってくるかもしれません。
645Zでは、液晶モニターがチルト可動に対応しました。これは、ペンタックスのデジタル一眼レフでは初めてとなります。ボディサイズやデザイン上の問題でチルト可動になったのだと推察されますが、縦位置も重視したボディだけに、できればバリアングル可動の方がより望ましかったとは思います。
これからの課題としては、レンズシステムの拡充があります。645Zの場合、35mm版に換算すると、焦点距離を概ね0.8倍にした画角に相当します。現在、標準域をカバーしているズームレンズは4本ありますが、いずれも10年以上前の製品であり、デジタルカメラに最適化した新製品が期待されます。
( by Inaba Kunio)
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