デジタルカメラのトレンドの一つに、Wi-Fi機能の搭載があります。もともとはWi-Fi機能を搭載したSDメモリーカード「Eye-Fi」がデジカメ分野におけるWi-Fi市場を切り拓いたと言えますが、初のEye-Fiカードが日本に上陸したのは2008年ですので、まだ5年程度しかたっていません。

　デジタルカメラ本体にWi-Fi機能を内蔵した最初の機種は、パナソニックのDMC-FX90だったと思います。発売開始は2011年9月ですから、こちらはわずか2年前ということになります。その後、キヤノンやソニー、ニコン、富士フイルム、カシオなどもWi-Fi内蔵デジカメをリリースしており、Wi-Fi機能はデジカメの標準機能の一つとなりつつあるように思います。また、コンパクトタイプだけではなく、レンズ交換式カメラにおいても、Wi-Fi搭載機種が増えてきていることも、最近の傾向のように思います。

　ここまで急速にWi-Fi機能が普及してきた背景には、スマートフォンやタブレットなど普段持ち歩く機器にWi-Fiが搭載されたことや、Wi-Fi搭載に必要なコストが大幅に低廉化されたことがありますが、スマートフォンに対するデジカメ側の「対抗措置」という面もあるかもしれません。

　いずれにしても、デジタルカメラで撮影した画像を簡単にスマートフォンやパソコンに取り込み、必要であればSNS等にもアップロードできるという機能を重視して、Wi-Fi機能搭載をデジカメ機種選定の条件とする方も増えてきているように思います。

　ただし、注意しなければいけないのは、一口に「Wi-Fi機能」と言っても、デジカメによって中身は同じではない、という点です。登場して新しい機能だけに、メーカーも試行錯誤の段階にあるのだと思います。

 

現在、Wi-Fi機能として実現されている機能は、概ね次の通りです。

画像データ転送機能

デジタルカメラで撮影した画像データをパソコンやスマートフォンに転送するもの。単に送るだけでなく、圧縮することでデータ容量を小さくしたり、動画データに対応しているものもあります。

画像データアップロード機能

デジタルカメラで撮影した画像データをネット上のクラウドにアップロードするもの。さらにSNSと連携する機能をもっているものもあります。

画像データ閲覧機能

パソコンやスマートフォンから、デジカメ内のメモリーカードに記録されている画像を閲覧する機能。実際には画像を選択し、パソコンやスマートフォン、ネットワークに転送する機能と組み合わせて活用します。

リモコン機能

上記3つの機能は、デジカメで撮影した後に使用するものですが、リモコン機能は撮影中に使う機能です。スマートフォンやタブレットの画面を電子ビューファインダーのように活用する機能で、動画や静止画の切替、ズーム操作、ISO感度設定などの設定変更に対応したものもあります。デジカメの液晶画面を取り外してリモコン操作できるようなイメージです。

　最近のデジタル一眼レフやミラーレスカメラに搭載されているWi-Fi機能は、概ね上記の機能全体をカバーしていますのであまり気を使わなくても良いのですが、注意が必要なのはコンパクトカメラの場合です。ざっくり分けると、リモコン機能に対応している機種と、対応していない機種ということになります。リモコン機能を実現するとデータ転送量や処理の負荷が大きくなります。コンパクトカメラの限られたパワーを、撮影自体を快適にする部分に集中し、撮影後にWi-Fi機能を使う方式にするのか、それともパフォーマンスにある程度の影響があったとしても、リモコン機能に価値を見いだすかという選択であり、このあたりはメーカーによって大きく分かれているように思います。

　一部例外もありますが、キヤノンとニコン、富士フイルムのコンパクトデジカメはリモコン機能非搭載タイプが多く、ソニーとパナソニックはリモコン機能搭載タイプです。カシオもWi-Fi搭載コンパクトカメラを1機種リリースしていますが、自分撮り機能を売りにした機種でもあることからリモコン機能搭載タイプとなっています。

　こうした機能面に加え、もう一つのポイントはNFC（Near Field Communication：近距離通信）への対応の有無です。使用するスマートフォンやタブレットがNFCに対応しているのであれば、デジカメとのペアリングが簡単にできるNFC搭載機の方が使い勝手が良いかもしれません。NFCを搭載している機種も徐々に増えてきましたので、使用環境によっては選択のポイントになってくると思います。