【ソニーのレンズ交換式デジタルカメラの特徴】

　あまり知られていないが、初めての実用デジタルカメラを作ったのはソニーである。1981年に登場したマビカ試作機がそれで、当時は電子スチルビデオカメラと呼ばれていた。マビカ試作機は画像をVGAで撮影でき、記録には2インチのフロッピーディスクを使用した。

　その後、電子スチルカメラ市場には、キヤノンやニコンをはじめ各社が参入した。現像時間が不要で、伝送もしやすいことから報道分野では用いられたが、結局一般家庭に拡がるのは、1994年のカシオQV-10の登場を待つことになる。電子スチルビデオカメラが普及しなかった原因は、画像を見るためにテレビ装置が必要であったこと、記録自体はアナログ方式であったこと、当時普及機に入りつつあった家庭用ビデオカメラと競合したこと、等が指摘されている。つまり、要素技術や時代のニーズから見て、少々登場が早かったのだろう。

　ソニーが本格的にデジタルカメラ市場に参入したのは1996年で、サイバーショットDSC-F1が初号機となった。その後、コンパクトデジタルカメラやネオ一眼を中心に精力的に製品を展開してきたが、レンズ交換式デジタルカメラ市場への参入は、2006年にコニカミノルタから一眼レフカメラ事業の譲渡を受けてからとなる。

●2種類のレンズシステムを展開

　当初、コニカミノルタのαレンズを使用するレンズ交換式デジタルカメラを展開していたが、2010年、オリンパスやパナソニックのマイクロフォーサーズ規格に引き続き、Eマウントのミラーレスカメラ、NEXシリーズを新たに投入した。現時点では、AマウントシステムからEマウントシステムへ移行するのではなく、両方のシステムが共存する方向性が示されており、先日もAマウントの新たなボディが発表されている。

　従来のAマウントシステムに対し、Eマウントシステムは「小型・軽量」が特長であるが、今回の新製品を見ても、両システムの対象顧客層が明確に住み分けられている訳ではない。これは個人的な見解だが、おそらく将来的には、一般ユーザー向けにはEマウントシステムが主流となり、Aマウントシステムはプロ用など一部用途向けとなっていくのではないか。

●Aマウントシステムではトランスルーセントミラーを採用

　2010年に発売されたα33/α55以降、Aマウントシステムのカメラはすべてトランスルーセントミラーを採用している。これは従来のクイックリターンミラーを透過型の固定ミラーに交換したものであり、可動部分が少なくなることによるコスト削減と、連写速度の向上がメリットである。また、ライブビュー時や動画撮影時にもミラーアップが必要ないため、シームレスな撮影モードの切り替えも可能となる。当然、高速連写中であっても同じようにオートフォーカスが動き続けるので、その面でもメリットとなる。

　同様の仕組みを採用したフィルムカメラにキヤノンEOS-RTがあった。しかし、EOS-RTは受光した光をファインダー側と映像記録側(フィルム)に分けたのに対し、ソニーはAFシステム側と映像記録側(イメージセンサー)に分離している。これは、ファインダーをEVF化することによって可能となったもので、EOS-RTとは異なり受光した光の大部分が映像記録側に振り向けられている。

●2種類のイメージセンサーを展開

　ソニーのレンズ交換式デジタルカメラには、フルサイズセンサーを搭載した機種とAPS-Cサイズセンサーを搭載した機種の2種類がある。といっても、Aマウントシステムのフラグシップ機α900のみがフルサイズセンサー搭載機であり、残りの機種はすべてAPS-Cサイズのイメージセンサーを搭載している。

　なお、ソニーもキヤノン同様、自社でイメージセンサーの設計・製造を行っている数少ないカメラ企業の一つである。

　先日、ソニーはα77をはじめとする新製品の発表を行い、順次発売も開始されている。まだ発売まで間がある機種もあるが、以下の記事では新製品の展開を前提として整理することとしたい。