進化するキヤノンのオートフォーカスシステム~EOS70Dのレビューを振り返って


Canon EOS70D
EOS70Dのレビューでは、ミドルクラスのAPS-Cデジタル一眼レフとして完成度の高さを実感しましたが、とくに印象に残ったのはオートフォーカスシステムの進化です。
ライブビューや動画撮影時のオートフォーカス速度を改善する取り組みは、ニコンがミラーレスカメラで採用した像面位相差方式が一歩先んじていましたが、キヤノンも急速にキャッチアップしています。
新たにEOS70Dに搭載されたデュアルピクセルCMOS AFは、EOS MやEOS KissX7のものと比べてもさらに性能が向上しており、十分実用レベルとなっています。

この間、キヤノンはライブビューモードでのオートフォーカス性能を次のように進化させてきました。

【ハイブリッド CMOS AF】
2012年6月に登場したEOS KissX6i、2012年9月のキヤノンのミラーレスカメラ、EOS M、2013年4月のEOS KissX7iに搭載。
イメージセンサー上に位相差AF用の画素を組み込み、ピントのズレと方向を判別してレンズを駆動し、追い込んだところでコントラスト方式AFで合焦させます。当初はそれほど高速化につながっていませんでしたが、その後のファームウェア・アップデートにより、約2.3倍高速化されたとのことです。

【ハイブリッド CMOS AF II】
2013年4月に登場したコンパクトデジタル一眼レフ、EOS KissX7に搭載。
EOS Mではハイブリッド CMOS AFの有効範囲は画面中央部に限られていたのに対し、IIでは画面の縦80%、横80%の広い範囲で機能するようになりました。位相差AF用画素とコントラスト方式を組み合わせて合焦させる仕組みはハイブリッド CMOS AFと同じです。

【デュアルピクセルCMOS AF】
今回、EOS70Dで初めて搭載されたオートフォーカス方式です。今までのハイブリッドCMOS AF方式とはまったく異なるもので、個々の画素を独立した2つのフォトダイオードで構成させ、画素自体が撮像と位相差AFの機能を兼ね備えています。

この方式のメリットは、合焦速度の向上(メーカー発表によると30%の高速化)と撮像イメージの低下につながらないため画面全体に組み込むことが可能である点です。レンズ性能により、実際にカバーしている面積は縦横80%となりますが、ほぼ画面全域で高速なオートフォーカス性能を実感できました。

また、ハイブリッドCMOS AF方式との違いということでは、撮影環境による影響を受けにくいということもポイントです。EOS KissX7でもSTMレンズを使用すると快適な使用感でしたが、USMレンズなどでは今一つという印象を受けることもありました。それに対しEOS70Dでは、レンズによるオートフォーカス性能の差は小さくなっています。もちろん、STMレンズのスムーズで静かなオートフォーカス駆動も魅力的ですが、旧来のレンズでもライブビューや動画撮影時に高速なオートフォーカスを楽しむことができます。

フィルムカメラの時代から、EOSの一番の特長は高速で正確なオートフォーカス性能であったと思います。今回、立て続けに進化させてきたことにより、像面位相差方式のオートフォーカス性能もかなり完成に近づいてきたように思います。キヤノンの今後の展開が楽しみです。