上級「エントリー」クラスのデジタル一眼レフ 【キヤノン EOS8000D】
2月6日、キヤノンからエントリークラスの新型デジタル一眼レフ、EOS8000Dが正式発表されました。EOS8000Dは同時に発表されたEOS KissX8iの兄弟機であるとともに上位機であり、新しいシリーズとなります。カメラとしての基本性能はEOS KissX8iと同じですが、液晶パネルの新設やインターフェース部の強化などの使い勝手の部分で、より上級者にフォーカスした仕上がりとなっています。
2013年4月に登場したEOS KissX7i と比べると、イメージセンサーや画像処理エンジンなどの描写部分が世代交代するとともに、オートフォーカスも強化されています。イメージセンサーまわりやライブビュー時のオートフォーカスは、やはり同時に発表されたEOS M3と同じものが搭載されており、EOS KissX8iを含む3機種は基本的に同じ描写性能を持っていると思われます。
キヤノン EOS KissX7i。2013年4月の発売開始でした。後継機はEOS KissX8iで、EOS8000Dは上位機の位置づけとなります。
それではEOS8000Dの特長について、主なポイントを見てみたいと思います。
イメージセンサーは総画素数2420万画素、有効2470万画素APS-C型CMOSセンサーで、同時に発表されたEOS KissX8iやEOS M3 に搭載されるものと同じです。EOS KissX7iには有効1800万画素のイメージセンサーが乗っていましたので、画素数は約3割アップしています。
画像処理エンジンも、X7iのDIGIC5からDIGIC6に進化しています。
対応しているISO感度は、標準でISO100-12800、拡張でISO25600に対応しています。このあたりはEOS KissX7iと同じです。
光学ファインダー使用時のオートフォーカスも強化されています。今までは9点のフォーカスポイントでしたが、これが19点に増えています。全点がクロスタイプとなっているのも、X7iと同じです。
ライブビュー時のオートフォーカスも強化されました。EOS8000Dでは新たにハイブリッドCMOS AF IIIが搭載されています。今までの方式は、高速な位相差方式AFでピントを追い込んだ後、詳細な合焦はコントラスト方式に依っていました。これに対しEOS8000Dでは、位相差方式のまま合焦させることが可能になりましたので、ハイブリッド CMOS AF IIを搭載したEOS KissX7と比べても最大で4.8倍高速化されたとのことです。また、測距点も画面の縦80%、横80%をカバーしています。なお、AF稼働時の最低照度が、EV1からEV0に1EV分向上しています。
連写性能は最高5コマ/秒となっており、EOS KissX7iと同じです。連続撮影可能枚数も、RAWで6枚から8枚へと強化されました。なお、EOS M3では最高4.2コマ/秒で、RAW撮影時5枚ですので、このあたりは差別化ポイントとなります。
インターフェースも強化されています。ボディ上面に新設された液晶パネルに、カメラの基本的な設定情報が表示されるとともに、サブコマンドダイヤルやボタン類も追加されています。
液晶モニターは3型104万ドットのタッチタイプ対応バリアングル可動液晶を引き続き搭載しています。
光学ファインダーの表示機能も進化しました。基本的にファインダーを覗きながら設定変更が可能なようになっています。グリッドや水準器の表示にも対応しています。
Wi-FiとNFCも内蔵しています。スマートフォンからのリモート操作も可能です。
ボディサイズは、僅かではありますが小型化されています。撮影状態での重さも軽量化されました。
EOS8000DとEOS KissX7iの比較
EOS8000D(左側)とEOS KissX7i(右側)。ボディデザインやサイズはKissシリーズを踏襲しています。ペンタ部のデザインがシャープになり、内蔵フラッシュのGNも13から12へと僅かながら抑えられています。
EOS8000D(左側)とEOS KissX7i(右側)。液晶モニターはどちらも3型104万ドットで、タッチ操作にも対応しています。左側に可動軸のあるバリアングル方式も踏襲されていますが、ヒンジ部分が小型化されているように感じます。
液晶モニターの右側にあるインターフェース部も似ていますが、設定ボタンの外周部にサブ電子ダイヤルが置かれているとともに、その下にはマルチ電子ロックスイッチも新設されています 。
EOS8000D(左側)とEOS KissX7i(右側)。ボディ上面は大きく変わっており、右肩部分には液晶パネルが設置され、モードダイヤルは左肩に移設されています。液晶パネルは、ボディサイズにあわせてコンパクトなものが搭載されています。また、その前には3つのボタンが置かれており、左から測距エリア選択ボタン、ISO感度設定ボタン、表示パネル照明ボタンとなっています。
【EOS8000DとEOS KissX8i、EOS KissX7iの比較】
機種名
EOS8000D
EOS KissX8i
EOS KissX7i
イメージ
センサー
有効2420万画素、総画素2470万画素
APS-Cサイズ CMOSセンサー
有効1800万画素
APS-Cサイズ CMOSセンサー
画像処理エンジン
DIGIC 6
DIGIC 5
高感度性能
ISO100-12800 拡張でISO25600
オートフォーカス (通常)
オールクロス19点AFセンサー
-0.5〜18EV
オールクロス9点AFセンサー
-0.5〜18EV
オートフォーカス (ライブビュー)
ハイブリッド CMOS AF III 方式 最大49点
2〜18EV
ハイブリッド CMOS AF方式 最大31点
1〜18EV
連写性能
5コマ/秒 RAW:8枚
5コマ/秒 RAW:6枚
動画
フルHD(30p)
ファインダー
ペンタダハミラー 視野率95% 倍率0.82倍 グリッド・水準器表示対応
ペンタダハミラー 視野率95% 倍率0.85倍
露出制御
7560画素RGB+IR測光センサーによる63分割TTL開放測光 EV 1〜20
63分割TTL開放測光 EV 1〜20
シャッター
1/4000-30秒 1/200秒まで同調可能
液晶モニター
3型104万ドット(3:2) バリアングル式 タッチ操作対応
ストロボ
GN12.0(ISO100)
GN13.0(ISO100)
付加機能
Wi-Fi NFC
-
バッテリー
LP-E17 440枚
LP-E8 440枚
サイズ
131.9 x 100.9 x 77.8mm
131.9 x 100.7 x 77.8mm
133.1 x 99.8 x 78.8mm
重さ
565g/520g
555g/510g
580g/525g
発売時期
2015年 4月
2013年 4月
実売価格 ()内は当初
96,000円前後
91,000円前後
52,000円前後 (81,000円前後)
EOS8000Dのポイントの一つがインターフェースまわりの強化です。液晶パネルやサブコマンドダイヤル、ボタン類の追加など、上位機に準じた操作性となっています。
EOS8000DとEOS KissX8iの比較
EOS8000D(左側)とEOS KissX8i(右側)。ボディ形状やグリップ部など、基本的なデザインは共通しています。
EOS8000D(左側)とEOS KissX8i(右側)。液晶モニターはどちらも3型104万ドットで、タッチ操作にも対応している点も同じです 。
液晶モニターの右側の部分をはじめ、インターフェースは違っている点も少なくありません 。基本的に、X8iのインターフェースはX7iと同じになっています。
EOS8000D(左側)とEOS KissX8i(右側)。モードダイヤルの位置や液晶パネルの有無など、ボディ上面は大きく違っています。X8iは基本的にX7iを踏襲していますが、グリップ上部にあるメインコマンドダイヤルの下にある3つのボタンは、両機種とも共通です。
EOS8000Dの発売は4月下旬の予定ですが、すでに予約受付も開始されています。ボディ単体で9万6千円前後、EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS STMとEF-S55-250mm F4-5.6 IS STMの2本のズームレンズが付いたダブルズームキットと、EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STMが付属したレンズキットが13万5千円前後でスタートとなっています。2013年3月に発売開始となったEOS KissX7iでは、ボディ単体で8万1千円前後、EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STMレンズキットで12万円前後でしたので、概ね1万5千円程度高価になります。ちなみに、EOS KissX8iでは同じ構成では5千円程度安価になりますので、同じくX7iと比べると1万円程度高価ということになるようです。
EOS 8000Dの上位機であるEOS70D(2013年7月発売)では、ボディ単体ではスタート時点で12万円前後、現時点では10万円前後となっていますので、ちょっと悩むところかもしれません。描写力ではEOS8000Dの方が勝るものの、ファインダーや連写性能をはじめとするカメラとしての基本部分ではEOS70Dの方が勝っています。また、サイズや重さの点では、一回りの違いとなっていますので、このあたりも選択のポイントになってくると思います。
EOS8000D(左側)とEOS70D(右側)。ボディサイズは一回り異なり、重さも150g程度の差がありますが、インターフェースは似ています。
いずれにしても、今までのKissシリーズをベースに、インターフェースまわりを強化した位置づけは、なかなか良い点をついているように思います。CP+2015では実機を触る ことができましたが、その時も好印象を抱きました。発売開始までまだ2カ月がありますが、楽しみなカメラであると思います。
(
2015年2月15日
by Inaba Kunio)