ミラーレスカメラへの移行は止まったのか?


Nikon Df

 カメラメーカーの発表によると、ミラーレスカメラの伸びが停滞しつつあります。こうした状況は、2008年9月に登場した最初のミラーレス、パナソニック LUMIX DMC-G1の登場以来、はじめてのことです。デジタル一眼レフもリリースしているメーカーは、そちらに開発資源を厚く振り向けるなどの施策をとり始めており、ミラーレスカメラに集約したメーカーは売上収益の下方修正を行いつつあります。
 スマートフォンの爆発的な普及によりコンパクトデジカメ分野が収縮している中、レンズ交換式カメラの騎手と目されていたミラーレスカメラの停滞は、メーカー各社も厳しく受け止めているものと思われます。このままミラーレスカメラは停滞し続けるのか、それともこれは一時的な現象なのか、ざっくりと考えていきたいと思います。(写真はAマウントレンズを装着したソニーα7)
 先に私の結論から申し上げると、この停滞は一時的なものであり、レンズ交換式カメラにおけるミラーレスカメラへの流れは確実に拡大していくと思います。デジタル一眼レフが担っていた撮影シーンの多くはミラーレスカメラに変わっていき、最終的にはフラグシップ分野の一部以外はミラーレスカメラが主流になるという流れは、これからも止まることなく進んでいくと考えています。

理由1:ミラーレスのメリットは変わっていない
 まず初めに整理する必要があるのは、デジタル一眼レフに対するミラーレスカメラのメリットは変わっていないということです。具体的には次の通りとなります。
  • ミラーボックスや光学ファインダーを省くことで小型軽量化が可能。
  • レンズ後端のフランジバックを短くできるため、とくに広角・標準レンズの小型化が可能。
  • 光学部品が減るため、カメラボディのデザイン自由度が高まる。
  • ミラー動作がなくなるため、音が小さくなるとともにブレにくくなる。
  • 静止画と同じように動画を撮影できる。
  • メカ部品や光学部品が減るため、コスト削減が容易。

理由2:ミラーレスのデメリットは克服されつつある
 当然ながら、ミラーレスカメラにはメリットだけでなくデメリットも存在します。フィルム時代から考えれば半世紀以上もの実績があるデジタル一眼レフの蓄積は、決して小さくありません。しかし、ミラーレスカメラが登場してからの4年間で、こうしたデメリットも徐々に克服されつつあるともいえます。
  • 電子ビューファインダーによる表示の遅延や追随性の問題。
  • 従来型の位相差方式オートフォーカスを搭載できないため、AF速度の問題。
  • 小型化のためには新型マウントが必要であり、従来のレンズ資産をそのままでは活用できない。
 これらの問題は、一般的な撮影シーンではすでにデメリットとは言えないレベルになってきています。
 少なくとも上級機の電子ビューファインダーでは、表示パネルの進化とともに画像処理エンジンの高速化で、遅延や追随性の問題はほぼ解決しつつあるように思います。また、像面位相差方式のセンサーでは、まだデジタル一眼レフ並みとは言えないものの、オートフォーカス速度が大幅に高速化されています。動きの激しい被写体でなければ、オートフォーカスの遅さが気になることは少なくなっており、センサー技術の向上で今後はさらに改善が期待できるとことです。
 レンズマウントの問題は最後まで残る問題ですが、ミラーレス用のレンズラインアップも徐々に充実してきているだけでなく、各社とも純正のマウントアダプターを用意しています。とくにソニーのように、マウントアダプター内に位相差方式の高速オートフォーカスユニットを内蔵した製品をリリースしているメーカーもあり、一つの解決策だと思います。
 このように「ミラーレスカメラだから我慢しなければならない」ことは、ほぼなくなりつつあります。

理由3:「ミラーレス」だから売れないのか?
 それでは、ミラーレスカメラのメリットは変わらず、デメリットが克服されつつある中で、デジタル一眼レフからミラーレスへの移行が停滞している原因は何なのでしょうか。私はミラーレスカメラのイメージが固定化し、本来持っているミラーレスカメラの力や可能性が十分発揮されていない点にあると考えています。
 私たちは「デジタル一眼レフ」というと、頭の中に一つのイメージが浮かびます。同じように「ミラーレスカメラ」というとイメージが作られますが、ミラーレスの本来の強みは「多様性」にあるのだと思います。光学設計やメカ構造に制約を受けるデジタル一眼レフに対し、ミラーレスカメラは要素技術を自由に組み合わせることが可能であるにもかかわらず、その試みがまだ始まったばかりであり、十分開花していないことが「停滞」の大きな要因だと感じています。
 今回、ソニーから登場したα7は、デジタル一眼レフと同じ描写性能を、デジタル一眼レフと同じデザインのボディに搭載しています。また、レンズマウントアダプターLA-EA4を介することで、既存のAマウントレンズをAマウントのカメラボディに装着したのと同じ使用感で撮影することもできます。その意味では、α7は「Eマウントレンズも使えるフルサイズのAマウント・デジタル一眼」ということも可能です。
 今までのミラーレスカメラは、一部の製品を除き「小型軽量性」にかなりの重点があったのではないでしょうか。このことはユーザーに対する「わかりやすさ」としては当然ですが、これからはα7のようなアプローチを含め、さらに幅広い試行が求められていると思います。