新しいコンセプトのフルサイズ、ニコンDfは売れるか?


Nikon Df

 時々、発表時点で「これは売れる!」と確信できるカメラが登場します。描写性能を格段に向上させたり、新しい機能を搭載するということもそうですが、それらに共通するのは「そのカメラを使って撮影してみたい」という強い意欲を感じさせてくれるカメラであるということです。フィルムからデジタルに変わる中で、カメラにおける実用性の比重はどんどんと重くなってきましたが、それでもカメラは、パソコンなどよりはまだまだ趣味性が重視されるプロダクトなのだと思います。
 今回、Dfの正式なリリースを受けて感じたのは、まさに「このカメラを使って撮影してみたい」という思いです。製品発表説明会の場で、ニコンフェローの後藤哲郎氏は「このカメラが売れれば、次の機種を出すことができる」と発言されていましたが、おそらくニコンが考えている以上にDfは売れるのではないかと思います。
 私自身がDfに魅力を感じた理由を自己分析してみると、次のようなことになります。
  • マニュアルフォーカス時代のフラグシップ機と同じサイズの中に、フルサイズの描写性能を実装したこと。
  • クラシカルなデザインであるだけでなく、同時に最新の操作性も搭載したこと。イメージ的にはF5の技術を元に再設計したF3といったことになります。
  • D4と同じセンサーと画像処理エンジンを採用したことで、ダイナミックレンジや高感度性能、速写性などがトップレベルの実力を持ったこと。
  • 拡張設定ではISO204800の設定が可能であり、これは一般的な夜景(ISO100、F5.6で15秒程度)でもF5.6の絞りで1/60秒のシャッターが切れることを意味します。
  • 実売価格は、発売から1年半以上が経過したD4の半額程度と、かなり値ごろ感があること。
 Dfには、単なる懐古趣味ではない最新の実力を備えたカメラとしての魅力があります。D4やD800よりもやや見劣りがするオートフォーカス性能や、アイピースシャッターの省略など、少々残念に感じる点もあります。また、あえて動画撮影機能の搭載を見送ったことについても議論の余地はありますし、ボディ外装の質感も実物を手にするまでは気になるところです。しかし、それらの点はごく些細なものであり、とにかく実際の撮影現場で使ってみたい、という思いを強く抱かせてくれるカメラであることは間違いありません。
 今月は、ソニーからも新型フルサイズ機、α7/α7Rが登場します。ミラーレスとデジタル一眼レフの違いはもちろんのこと、多様性を持った製品が各社から登場してくることは、これからのデジカメ界の発展にも大きく繋がっていくのだと思います。