高級コンパクトカメラの新しい流れ


ここのところ、高級コンパクトの新製品が相次いで登場しています。その背景には、「単に写ればよい」というニーズはスマートフォンによって満たされつつあるという状況があるのですが、こうした流れは描写性能を重視するユーザーにとっても嬉しいことではないかと思います。

「描写性能を重視したコンパクトデジカメ」に何を求めるのか、ということを考えると、そこには様々な広がりがあることがわかります。

『せっかくデジカメを使うのだから、スマートフォンとは一味違ったきれいな写真を撮りたい。』
『普段はデジタル一眼レフを使うが、ちょっとした散歩で気軽に持ち歩きたい。とはいえ、デジタル一眼レフと同等の描写性能は欲しい。』
『1枚1枚丁寧に撮影したい。撮る過程を楽しむとともに、仕上がりにも期待する。』
『デジタル一眼レフを使いづらいシーンでの撮影に使いたい。同等レベルの描写性能は求めないが、できるだけ高い描写力がほしい。』

これらのニーズのいずれもが「高級コンパクト」につながっていく可能性がありますが、具体的な製品像は微妙に異なっていることに注目する必要があると思います。一言でいえば、描写性能とコンパクト性、機能性、そして操作感(インターフェース)の4つをどのレベルでバランスさせるのか、ということになるわけですが、最近の高級コンパクトの傾向は、今まで以上に描写性能を重視する方向へ動いています。

そのトレンドの一つが、デジタル一眼レフと同等サイズのイメージセンサーと、単焦点レンズを搭載しているカメラです。
現行機種では、ソニーのDSC-RX1ニコンのCOOLPIX AシグマのDP Merrillシリーズ富士フイルムのX100S、そしてペンタックスリコーのGRが該当しますが、いずれも極めて高い描写性能が一番の特長です。

他方で、4~5倍程度のズームレンズを搭載した機種に対するニーズも高いものがあります。
このジャンルでは、オリンパスXZ-2キヤノンPowerShotG1XPowerShotG15PowerShotS110、ニコンCOOLPIX P330COOLPIX P7700ソニーDSC-RX100パナソニック DMC-LX7富士フイルムX20XF1ペンタックスリコーMX-1が揃っています。また、噂によれば、パナソニックから出る新型機(LF1?)も、このカテゴリーの製品となるようですが、このジャンルは数の上でも一番のボリュームゾーンになってきます。

もう一つの重要な切り口が「操作性」です。上記の製品はいずれもダイヤルやボタン類を重視したカメラとなっていますが、さらにファインダーを搭載したり、外付け可能な設計となっているものが多いのも特徴的です。

こうしてみると、ここ1~2年で、高級コンパクトの分野自体の幅が広がったことを感じます。その一方で、手ごろなズームと大型センサーを搭載した機種はソニーのDSC-RX100だけであったり、あるいは比較的コンパクトでファインダーを内蔵している機種は富士フイルムのX20とキヤノンのPowerShotG15だけというように、まだまだ層を厚くする余地は十分残されていることも気づかされます。逆に言えば、これから登場する新製品への期待感が高まる、と言えるのかもしれません。