APS-Cサイズのフラグシップ・デジタル一眼レフ 【キヤノン EOS7D MarkII】
2009年10月にリリースされたキヤノンのデジタル一眼レフ、EOS7Dは、APS-Cクラスの最上位機種として登場しました。有効1800万画素のイメージセンサーだけでなく、8コマ/秒の連写性能や1/8000秒まで対応したシャッタースピード、従来機種から大幅に強化されたオートフォーカス、視野率100%のペンタプリズム光学ファインダーなど、発売開始から5年たった現在でも見劣りのしない実力を持っています。この間、EOS7Dの後継機の噂情報はたびたび流れていましたが、まがりなりにも丸5年もの間、現役機種の座を維持できたことも、しっかりとした基本性能があったからこそと言えます。
そして、満を期して発表されたのがEOS7D MarkIIです。11月上旬の発売予定ということですので、実機を手にするのにはまだ若干時間がかかりますが、伝えられている情報を見ただけでもEOS7Dから全面的にブラッシュアップされており、期待を裏切らない仕上がりであることがわかります。
キヤノン EOS7D。2009年10月の発売開始で、当時の実売価格はボディ単体で18万円前後でした。ニコンのD300S/D300のライバルとして登場しました。
それではEOS7D MarkIIの特長について、主なポイントを見てみたいと思います。
- イメージセンサーは有効2020万画素APS-CサイズCMOSセンサーです。EOS7Dは1800万画素でしたので、高画素化されています。なお、2013年8月に登場したEOS70Dも有効2020万画素でしたので、ほぼ同等と思われますが、仕様上のサイズは僅かながら違いがあります。メーカーインタビューによると、半導体製造工程で新プロセスを採用したとのことですので、ハードウェア的にもEOS70Dとは違いがあるものと思われます。
- 画像処理エンジンはDIGIC6を2つ搭載したデュアルシステムとなっています。なお、EOS7DではデュアルDIGIC4でした。画像処理エンジンとともにA/D変換用フロントエンド処理回路もデュアル化することで、速度と精度の両方が強化されています。
- 対応しているISO感度は、標準でISO100-16000、拡張でISO51200に対応しています。EOS7Dでは標準でISO6400まで、拡張でもISO12800でしたので、1段以上強化されています。なお、EOS70Dでは、標準でISO6400、 拡張でISO25600です。
- オートフォーカスの強化もポイントの一つです。65点すべてがクロス対応の測距点で、中央部はデュアルクロス化されています。エクステンダー使用時などでは開放F値がF8になる場合もありますが、その状態でも中央部ではクロス測距が可能になった点も、実用性の向上につながっています。AFが稼働する輝度範囲も-0.5EVまでだったEOS7Dに対し、EOS7D Mk2では-3.0EVまで広がっています。また、EOS70Dと同様に、ライブビュー撮影時にはデュアルピクセル CMOS AF方式とコントラスト検出方式の両方が機能します。
- 連写性能も強化されています。最大8コマ/秒であったEOS7Dに対し、EOS7D Mk2では10コマ/秒まで高速化されました。また、連続撮影可能枚数も大幅に増えており、UDMA対応カードであればRAWで31枚までの連写が可能です。EOS7Dでは15枚、EOS70Dでは16枚となりますので、EOS7D Mk2が頭一つ抜けた実力と言えます。
- シャッター速度は1/8000秒〜30秒でありEOS7Dと同じですが、ミラーバウンドの抑制や可動部分の摩耗逓減により、20万回までの耐久性(EOS7Dは15万枚)が確保されています。
- 動画撮影もフルHD(60p)に対応しており、EOS7Dの30pまでよりも強化されています。
- 光学ファインダーは視野率100%、倍率1.0倍と、EOS7Dと同じですが、インテリジェントビューファインダーIIとなっています。新しい透過型液晶デバイスにより、65点の測距点表示はもちろんのこと、撮影モード、ドライブモード、AF動作、記録形式などの撮影情報や電子水準器(左右各7°/上下各4°)も表示できます。ファインダー視野外には、2種類の露出レベル表示を装備し、これまでEOS-1D系のみに採用されていた測光値も表示可能です。これらにより、ミラーレスカメラの電子ビューファインダーに劣らない情報表示が可能となりました。
- 液晶モニターはEOS7Dと同じ3型ですが、アスペクト比が4:3から3:2に変わりました。最大サイズの静止画撮影時には、より大きな画像を表示可能になりました。
- 新たにGPSが搭載されています。 ロシアのGLONASSや日本の準天頂衛星みちびきにも対応しています。移動の軌跡を記録するログ機能も搭載されています。
- EOS7DではCFカードのシングルスロットでしたが、EOS7D Mk2ではCFカードに加えてSDカードも搭載されたデュアルスロットとなっています。
- 外部接続端子のUSBが2.0から3.0に進化しています。パソコン等への転送速度が速くなるとともに、ワイヤレスファイルトランスミッターWFT-E7Bも接続可能です。
- インターフェースはEOS7Dと概ね共通していますが、液晶モニター右側にあるサブ電子ダイヤルが静電容量方式での操作にも対応したため、動画撮影中に操作音を抑制することが可能です。
- ボディサイズは概ね同等レベルとなっています。ボディ単体での重さも820gで同じです。
EOS7D MarkII(左側)とEOS7D(右側)。ボディサイズはほぼ同じですが、グリップ上部のシャッターボタンまわりなど、形状が変わった部分もあります。EOS7D Mk2には、右下に「Mark II」のロゴが入っています。なお、EOS7D Mk2はミラーアップ状態のため、イメージセンサーが写っています。
EOS7D MarkII(左側)とEOS7D(右側)。液晶モニターはどちらも3型ですが、アスペクト比が4:3から3:2に変わっています。静止画を主体に撮影するカメラでは、基本的にはイメージセンサーのアスペクト比と同じ方が使い勝手が良いように思います。
EOS7D MarkII(左側)とEOS7D(右側)。ボディ上面のレイアウトも概ね共通ですが、左肩にあるモードダイヤルにはロックボタンが追加されています。また、新たにGPSが搭載されたため、アクセサリーシューの前にアンテナが内蔵されているようです。
【EOS7D MarkIIとEOS7D、EOS70Dの比較】
機種名 |

EOS7D |

EOS7D MarkII |

EOS70D |
イメージ
センサー |
有効1800万画素 APS-Cサイズ(22.3mmx14.9mm) CMOSセンサー |
有効2020万画素 APS-Cサイズ(22.4mmx15.0mm) CMOSセンサー |
有効2020万画素 APS-Cサイズ(22.5mmx15.0mm) CMOSセンサー |
画像処理 エンジン |
デュアルDIGIC4 |
デュアルDIGIC6 |
DIGIC5+ |
高感度性能 |
ISO100-6400 拡張でISO12800 |
ISO100-16000 拡張でISO51200 |
ISO100-6400 拡張でISO25600 |
オートフォーカス |
19点(19点:クロス)
-0.5〜+18EV |
65点(65点:クロス、中央測距点はF2.8対応デュアルクロス測距)
-3〜+18EV |
19点(19点:クロス)
-0.5〜+18EV |
ライブビュー時 |
コントラスト検出方式 |
デュアルピクセル CMOS AF方式/コントラスト検出方式
-0.5〜+18EV |
連写性能 |
8コマ/秒 RAW+JPEGラージ/ファイン:約6枚 |
10コマ/秒 RAW+JPEGラージ/ファイン:約18枚 |
7コマ/秒 RAW+JPEGラージ/ファイン:約8枚 |
動画 |
フルHD(30p) |
フルHD(60p) |
ファインダー |
ペンタプリズム 視野率100% 1.0倍 |
ペンタプリズム 視野率98% 0.95倍 |
シャッター |
1/8000-30秒 1/250秒まで同調可能 |
ストロボ |
GN12 15mm画角カバー |
GN11 15mm画角カバー |
GN12 17mm画角カバー |
バッテリー |
LP-E6 800枚 |
LP-E6N 670枚 |
LP-E6 920枚 |
液晶モニター |
3型92万ドット |
3型104万ドット |
メモリーカード |
CF(シングル) |
CFとSD(デュアル) |
SD(シングル) |
付加機能 |
- |
GPS |
Wi-Fi |
サイズ |
148.2 x 110.7 x 73.5mm |
148.6 x 112.4 x 78.2mm |
139.0 x 104.3 x 78.5mm |
重さ |
- g/820g |
910g/820g |
755g/675g |
発売時期 |
2009年10月 |
2014年11月 |
2013年 8月 |
実売価格 ()内は当初 |
100,000円前後 (180,000円前後) |
200,000円前後 |
100,000円前後 (120,000円前後) |
ボディ外装はマグネシウム合金製で、トップ、リア、フロントカバーによって構成されています。防塵防滴性能もシーリングの改善により、さらに強化されています。
新たに専用バッテリーグリップBG-E16が用意されています。バッテリーパック LP-E6N/LP-E6をそれぞれ2個装填するだけでなく、同梱のバッテリーマガジンを使用し単3形電池4本を使用することも可能です。縦位置撮影用の操作性も配慮されており、マルチコントローラーや測距エリア選択ボタンも設けられています。
なお、メーカーの発売キャンペーンとして、先着10000名にプレゼントする企画がありますので、早めに購入された方は応募を忘れずに。
EOS7D MarkIIの発売は11月上旬の予定で、まだ正式な日付は発表されていません。EOS7Dよりもやや上位の位置づけとのことですが、価格的には概ねEOS7Dと同等レベルになりそうです。
EOS7D MarkIIは、機動力を重視したハイクラスの製品であり、フルサイズ画質を重視したEOS5D MarkIIIやEOS6Dと対になる機種であると言えます。いずれにしても5年ぶりの世代交代であり、メーカーの強い期待が感じられます。
(
by Inaba Kunio)
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