【一口コラム】「デジタル一眼レフ」風のコンパクト・ネオ一眼
ペンタックスは国内カメラメーカーの中でもそれほど体力のある企業ではない。デジタルカメラの国内市場シェアを見ても、ペンタックスの占有率は5%以下となっており、上位のニコンやキヤノンと比すべくもない。しかし、こうした状況とは裏腹に、トピックスにあふれた製品をリリースするとともに、根強いファンを持っているのもペンタックスの特長である。中判カメラの645Dや小型ミラーレスPENTAX
Q、デジタル一眼レフからミラーボックスと光学ファインダーを取り除いた(だけ?)に見えるK-01など、アグレッシブな製品展開を続けている。
今回、ペンタックスから発表されたX-5も、そうした製品の一つだろう。X-5を一見すると、ズームレンズを搭載したデジタル一眼レフのように見える。デジタル一眼レフに似たミラーレスと言えば、富士フイルムのX-S1やパナソニックのDMC-FZ200など、決して少なくはない。しかし、それらの機種と比較しても、X-5の「似具合」は、トップクラスと言えるだろう。もともとペンタックスはネオ一眼を継続的に揃えてきた企業の一つであり、その中で蓄積されたノウハウが機能面でもいかんなく発揮されている。
X-5の主な特徴は、
- 小型デジタル一眼レフK-rと比較しても、一回り小さいボディ。
- イメージセンサーは有効1600万画素1/2.33型CMOS。
- 搭載するレンズは、22.3-580mm(35mm換算)、F3.1-5.9。
- 液晶モニターは上下チルト方式の3型46万ドット。
- 23万ドットの電子ビューファインダーを内蔵。
- フルHD(30fps)の動画撮影に対応。
- 電源は単三電池4本で、アルカリ電池では330枚の撮影が可能。
という点であり、使い方によっては「これ一台」でそこそこの撮影シーンをカバーできるだろう。
X-5(左側)とK-r(右側)。比較的小型なK-rと比べてもひとまわり小さい。このサイズで、22.3mm-580mm相当のズームレンズが内蔵されていることは、フィルム時代には考えられなかった。レンズ技術だけでなく、イメージセンサーや画像処理エンジンの進化があったからこそである。
X-5(左側)とK-r(右側)。X-5の背面液晶はチルト式となっており、上下に可動する。親指部分のインターフェースは、ほぼK-rと同じである。
X-5(左側)とK-r(右側)。ボディ上面のレイアウトも、K-rを踏襲している。K-rに装着されているのは18-55mmの標準ズームレンズ。なお、X-5にはアクセサリーシューは搭載していない。
背面の液晶モニターは上下にチルトする。また、内蔵フラッシュは広角端で最大11.6mまで対応する。ポップアップの高さも十分あるため、レンズ鏡胴によるケラレは発生しにくいだろう。
主な仕様についてX-90(2010年3月発売)と比較すると、次のとおりである。
【X-5とX-90の比較】
機種名 |
X-5 |
X-90 |
イメージセンサー |
有効1600万画素
1/2.33型CMOS |
有効1210万画素
1/2.33型CCD |
レンズ |
22.3mm-580mm F3.1-5.9
(35mm換算) |
26mm〜676mm F2.8-5.0
(35mm換算) |
ファインダー |
23万ドット |
20万ドット |
ISO感度 |
ISO100-6400 |
ISO80-6400 |
シャッタースピード |
4-1/1500秒 |
4-1/4000秒 |
液晶モニター |
3型46万ドット
チルト液晶 |
2.7型23万ドット |
連写速度 |
10コマ/秒 |
11コマ/秒 |
動画撮影 |
1920 X 1080 (30p) |
1280 X 720 |
インターフェース |
USB、HDMI、A/V output |
USB、HDMI、A/V output |
バッテリー |
330枚
(アルカリ電池) |
255枚 |
サイズ
(W x H x D) |
120×86.5×106.5mm |
111x84.5x110 mm |
重さ
(含カード、電池) |
599g |
428g |
比べてみると、X-5はX-90の正統進化モデルであることが分かる。レンズは広角側にシフトしているが、実際の使い勝手を考えると、より使いやすくなっていると言えるだろう。レンズの明るさが1/3段ほど暗くなっている点は残念であるが、実質的にはあまり影響はないかもしれない。
X-5(左側)とX-90(右側)。基本的なつくりは似ているが、デザインテイストは大きく異なる。
(8月23日 記)
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