手ぶれ補正を搭載したフルサイズ・ミラーレス 【ソニー α7II ILCE-7M2】
ソニーから、α7シリーズの4機種目、α7II ILCE-7M2が登場しました。国内市場では引き続きα7(実機レビュー記事) も販売されるようですので、位置づけとしてはα7の進化モデルということになるようです。
α7IIの一番のポイントは、手ぶれ補正機構をボディ内に搭載した点です。今までソニーのミラーレスカメラでは、レンズ側で手ぶれ補正機能を搭載していましたので、Eシリーズとしては初の手ぶれ補正機となります。また、他社製品を含め、フルサイズのイメージセンサーを搭載したデジタルカメラにおいて、手ぶれ補正機構を内蔵したものもα7IIが初めてとなります。
2013年11月に登場したα7シリーズは、これで4機種が揃えられたことになります。各々の特徴を見ると、次の通りです。
α7 :24メガ画素のフルサイズ・スタンダード機。
α7R :36メガ画素のフルサイズ・高画素対応機。
α7S :12メガ画素のフルサイズ・高感度対応機。4K動画撮影にも対応(外部記録)。
α7II:24メガ画素のフルサイズ・手ぶれ補正対応機。
今回、α7IIには5軸対応の本格的な手ぶれ補正機構が搭載されており、ボディ形状も新たなものに変更されています。今後のソニーの方向性は明確に示されているわけではありませんが、おそらくα7Rやα7S(実機レビュー記事) の後継機には、同様の手ぶれ補正機構が搭載されるものと推察されます。現在、Eマウントのフルサイズ対応レンズは7本ありますが、5本のズームレンズには手ぶれ補正機構が内蔵されていますので、手ぶれ補正が搭載されていないのは2本の単焦点レンズのみとなります。しかし、ソニーAマウントレンズはボディ内手ぶれ補正を前提としたレンズ構成となっていますので、今までのEシリーズでは、マウントアダプタ経由で使用できるものの、手ぶれ補正機能を使うことはできませんでした。今回、α7IIでは手ぶれ補正機構が搭載されましたので、Aマウントレンズの使い勝手がかなり向上するものと思われます。
今後、APS-CサイズのEマウント機にも手ぶれ補正機構は搭載されるのかどうか、また今後のレンズ展開はどのようになるのかが気になるところです。
ソニー α7。2013年11月の発売開始で、Eマウントカメラ初のフルサイズ機となります。高画素モデルのα7Rと同時にリリースされましたが、オートフォーカス機能や連写力などはα7の方が勝っています。
それではα7II ILCE-7M2の特長について、主なポイントを見てみたいと思います。
イメージセンサーは総画素数2470万画素、有効2430万画素フルサイズCMOSセンサーで、α7に搭載されているものと同等と思われます。
新たにセンサーシフト方式の手ぶれ補正機構が搭載されました。角度ブレやシフトブレ、回転ブレにも対応した5軸対応方式のもので、最大で4.5段分の補正効果が謳われています。なお、手ぶれ補正機能は動画撮影時にも5軸対応で使用可能です。
手ぶれ補正機能を内蔵したEマウントレンズを使用する場合には、レンズ側で角度ブレを、ボディ側でシフトブレと回転ブレを補正します。
オートフォーカスは、α7と同様に、位相差検出方式とコントラスト検出方式を組み合わせたファストハイブリット方式となっています。アルゴリズムの進化により、α7よりもさらに30%の高速化が図られています。AF可動は、-1〜20EV(ISO100、F2.0レンズ)となっています。
連写性能も強化され、AFとAEを追随させる通常連写でも5コマ/秒の撮影が可能となりました。
グリップ部分の形状が変わり、グリップが大型化されるとともにシャッターボタンの位置もグリップ上に移設されています。より大型のAマウントレンズ使用時にも安定したホールドができるようになっています。
インターフェースではカスタムボタンが3つから4つに増えています。
電源スイッチを入れてから撮影可能になるまでの時間も、α7よりも40%短縮化されています。
電子ビューファインダーは、これまでのα7シリーズと同様に、0.5型236万ドットのパネルが採用されています。0.71倍の倍率も同様です。
液晶モニターは3型を引き継いでいますが、RGBW方式122万ドットのパネルが採用されています。白画素が追加されることで、屋外での視認性も向上しています。 タッチ操作には対応していません。
液晶モニターのチルト角度が、上107度、下41度に変わっています。
動画撮影機能では、α7Sと同様にXAVC Sにも対応しました。
Wi-FiとNFCも引き続き搭載しています。スマートフォン等でのリモート操作にも対応しています。
ボディサイズは、高さと奥行きがやや大きくなるとともに、重さも撮影状態で125g増加しています。
レンズマウント部は、α7Sと同様に、内爪部分も金属化されています。
α7II ILCE-7M2(左側)とα7 ILCE-7(右側)。ボディデザインは踏襲されていますが、高さは94.4mmから95.7mmへと1.3mm高くなっています。ファインダー部の形状やグリップ部分のデザインは変更されています。ボディ全体の中に占めるマウント部の位置が高くなっており、これは手ぶれ補正機能を内蔵したためと思われます。縦位置グリップも新型のVG-C2EMに変わりました。
なお、写真でもわかるとおり、マウント口金部分が内爪まで金属化されています。このあたりはα7S同様に強化されたものと思われます。
α7II ILCE-7M2(左側)とα7 ILCE-7(右側)。液晶モニターはどちらも3型ですが、ドット数は92万ドットからRGBWタイプの122万ドットに変わっています。チルト可動域はα7の上90度、下45度から、上107度、下41度に変わっています。タッチ操作にはどちらも対応していません。
電子ビューファインダーは0.5型236万ドットで同等のものと思われます。
α7II ILCE-7M2(左側)とα7 ILCE-7(右側)。ボディ厚は48.2mmから59.7mmへと11.5mm増しています。主にグリップ部分の形状が変わったことによるものですが、ボディ厚もやや厚くなっていることがわかります。シャッターボタンがボディ部からグリップ上に移設され、前ダイヤルの位置もグリップ前面に動かされるとともに、ボディ上のカスタムボタンが増設され2つに増えています。モードダイヤルと露出補正ダイヤルは引き続き搭載されています。
【α7II ILCE-7M2とα7、α7S、α7Rの比較】
機種名
α7II
α7
α7R
α7S
イメージ
センサー
35mmフルサイズ (35.8×23.9mm) "Exmor"CMOSセンサー 有効2430万画素
35mmフルサイズ (35.9×24.0mm) "Exmor"CMOSセンサー 有効3640万画素
35mmフルサイズ (35.6×23.8mm) "Exmor"CMOSセンサー 有効1220万画素
高感度性能
ISO100-25600(拡張でISO50)
ISO100-102400 (拡張でISO50-409600)
オートフォーカス
ファストハイブリッドAF (位相差検出方式/コントラスト検出方式)
コントラスト検出方式
連写性能
5コマ/秒 RAW:30枚
2.5コマ/秒 速度優先時:5コマ/秒 RAW:30枚
1.5コマ/秒 速度優先時:4コマ/秒 RAW:21枚
2.5コマ/秒 速度優先時:5コマ/秒 RAW:61枚
動画
フルHD(60p) XAVC Sに対応
フルHD(60p)
フルHD(60p) XAVC Sに対応
ファインダー
電子ビューファインダー 276万ドット 視野率100% 0.71倍
シャッター
1/8000-30秒 1/250秒まで同調可能
1/8000-30秒 1/160秒まで同調可能
1/8000-30秒 1/250秒まで同調可能
バッテリー
NP-FW50 340枚
NP-FW50 380枚
液晶モニター
3型122万ドット(4:3)
3型92万ドット(4:3)
付加機能
手ぶれ補正機構
Wi-Fi/NFC
Wi-Fi/NFC
サイズ
126.9 x 95.7 x 59.7 mm
126.9 x 94.4 x 48.2 mm
重さ
599g/556g
474g/416g
465g/407g
489g/446g
発売時期
2014年12月
2013年11月
2013年11月
2014年 6月
実売価格 ()内は当初
190,000円前後
130,000円前後 (140,000円前後)
190,000円前後 (200,000円前後)
210,000円前後 (230,000円前後)
α7登場から1年で、また新しい展開を見せたことになりますが、今回α7IIをみると、あらためてソニーの意気込みを感じます。α7で気になっていた点に丁寧な対応がされるとともに、Aマウントレンズを使うカメラボディとして不足のない実力を持つに至りました。ボディの剛性を高めるとともに、大型のレンズを装着してもしっかりしたホールディングが可能になり、極め付けとして手ぶれ補正機能をAマウントカメラと同様にカメラ本体側に実装したことで、Aマウントカメラをメインに使っていたユーザーにとっても選択肢の一つになっています。その意味では、「Eマウントレンズも使えるα99後継機」に向けた第一歩がα7IIなのかもしれません。
すでにα7IIの店頭予約も始まっており、概ねα7Rと同等の19万円前後でのスタートとなりそうです。ちなみに、α99の実売価格は20万円前後となりますので、価格的にも十分対抗できるレベルと言えます。今回、Aマウントレンズ3本も発表され、70-300mm F4.5-5.6 G SSM、ツアイスブランドのF2.8通しズーム、24-70mmF2.8 ZA SSMと16-35mmF2.8 ZA SSMがリニューアルされ、AF高速化と防塵防滴性、ゴースト逓減を行っていますが、これもα7IIの登場を視野に入れたものかもしれません。
Aマウントボディ・フラグシップ機のファインダーを電子ビューファインダー化したことがデジタル一眼とミラーレスの統合の第一歩とすれば、手ぶれ補正機構を搭載したα7IIの登場は第二歩にあたります。EマウントボディへのAマウントボディの実質的な統合は、意外と近いのかもしれません。
(
2014年11月22日
by Inaba Kunio)