高級コンパクトの選び方~購入にあたって注意すべきポイント


ソニー サイバーショット DSC-RX1

 スマートフォンの普及と進化に伴い、単なる記録が目的であればわざわざデジタルカメラを使う必要がなくなってきました。スマートフォンであればいつでも持ち歩いていますし、ネットワークにつながっていますから撮った写真の共有も簡単です。最近では簡単なビジネス用途でもスマートフォンを使う方も少なくありません。その結果、メーカー各社も高付加価値モデルに重点を置き始めています。たとえば、スマートフォンでは難しい望遠ズームレンズを搭載した機種や、水中などの過酷な環境でも問題なく使える機種、毎秒30コマの連写ができる機種などです。ここで取り上げる「高級コンパクト」も、この高付加価値モデルの一つで、とくに描写性能に力を入れたカメラと言うことができます。
 ちなみに「高級コンパクト」という概念は、フィルム時代に生まれたもので、1996年10月に発売開始となったリコーGR1が最初です。薄型ボディに28mmF2.8の高性能単焦点レンズを搭載しており、現在のリコー GRの先祖でもあります。
(写真はソニー サイバーショット DSC-RX1。フルサイズセンサーに35mmF2.0を搭載。)

ポイント1:目的を整理する
 各社とも高級コンパクトの品ぞろえに力を入れており、現行機だけでも優に20機種を超えています。価格も、2万円台で買えるものから20万円を超えるものまで幅広く展開されており、この中から最適な1台を選ぶのは簡単ではありません。
 選択に当たって、まず整理しなければいけないのは、そのカメラをどういう風に活用したいのかということです。その内容によっては、高級コンパクトではなくミラーレスカメラなどのレンズ交換式カメラの方が適している可能性もあります。
 といっても難しく考える必要はなく、そもそもなぜ「高級コンパクト」に興味を寄せられたのかを明確にする、ということです。
 一般的に、次のような理由から高級コンパクトを選択される方が多いように思います。
  • ポケットやポーチに入れて持ち運びたい。
  • 単に記録するだけでなく「撮る愉しみ」も感じたい。
  • スマートフォンとは明らかに違う写真を撮りたい。
  • 写真撮影がメインではないものの、せっかくならきちんとしたものを撮りたい。
  • レンズの交換などの手間がかからず、カメラ本体だけで完結していてほしい。
  • カメラにおまかせではなく、いろいろと工夫した撮影もしたい。
  • きちんとした写真を撮りたいが、できるだけ予算も節約したい。
 どれもが十分な理由であると思います。注意する必要があるとすれば、最近ではミラーレスカメラの中にはコンパクトカメラ並みに小型軽量なものも出てきていることや、価格面でもレンズ込みで高級コンパクトよりも安く購入できるものもあるという点です。カメラ選びに当たっては、高級コンパクトに焦点をあてつつ、まわりにも目配りをされると良いと思います。

ポイント2:ズームレンズか単焦点レンズか?
 カメラの使い勝手の点では、搭載しているレンズがズームか単焦点かが大きく影響します。普段持ち歩いて日記風に活用する「お散歩カメラ」など目的が明確であれば単焦点レンズがふさわしい場合もある一方で、多目的に使うのであればズームレンズを搭載している方が利便性が高くなります。最近では、ズームレンズだから単焦点レンズよりも描写性能が低いということは一概に言えなくなりましたが、それでも高級コンパクトに搭載されているクラスの単焦点レンズの写りは一味違うのも事実です。
 また、単焦点レンズ搭載モデルの魅力は、レンズ交換式カメラと同じ大型イメージセンサーを搭載している点にもあります。現行モデルではすべての機種がAPS-Cサイズ以上のセンサーですので、デジタル一眼レフやミラーレスカメラと同等以上の描写性能を得ることができます。「なにしろ描写性能を第一に優先する」のであれば、単焦点モデルの中から選択することをお勧めします。デジタルカメラではフィルム時代よりも容易にトリミングができますし、また各機種が搭載している超解像テクノロジーの活用で、固定焦点であることのデメリットもある程度緩和することができます。

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ポイント3:機能面への目配り
 カメラ選びに当たっては、描写性能だけでなく機能性についても目配りが必要です。とくに留意すべきものとしては、オートフォーカス性能、ファインダーの有無、フラッシュの対応、液晶モニターの可動性、Wi-FiやNFCなどの無線機能があります。
 まず、オートフォーカス性能ですが、コントラスト方式のAF速度が向上してきているとともに、新たに像面位相差方式も併用することでさらに高速化した機種も現れています。静止した被写体の撮影であれば、どの機種も必要十分な水準となっていますが、とくに動きの激しい被写体であれば違いが出てくる場合があります。このあたりはパンフレットを見ただけではわかりにくい部分ですので、できれば実際に店頭で試してみたい点の一つです。
 次のファインダーについてですが、ボディ内に内蔵している機種、外付電子ビューファインダーに対応している機種、非対応の機種にわかれます。最近では、コンパクト性を活かすためにオプションで外付電子ビューファインダーに対応する機種が増えてきています。ファインダーを使った撮影では、より安定したフォームで撮影できるので手ぶれしにくく構図づくりが容易であることや、明るい屋外でもきちんと被写体を見ることができるといったメリットがあります。その分、ボディが大きくなったり、価格がアップしたりというデメリットもあります。とくに外付電子ビューファインダーは3万円前後のものが多いので、ボディ価格に比べると割高に感じられるかもしれません。すぐに答えが出なければ、まずは外付EVFに対応したボディ本体のみを購入する、ということでも良いと思います。
 フラッシュについては、ごく一部の機種を除いてほとんどのものが内蔵しています。ただし、内蔵フラッシュは発光量が小さいため、比較的近距離でのみ有効となります。ある程度フラッシュを活用したいのであれば、外付フラッシュに対応している機種から選択する必要があります。なお、アクセサリーシューを搭載していなくても、内蔵フラッシュに連動させて外付フラッシュを発光させられるものもあります。
 液晶モニターを可動方式にすると、その分ボディが厚くなる傾向がありますが、人混みが多い時でも頭の上にカメラだけをだして撮影したり、ローアングルでの撮影、また180°回転できるものであれば、手に持ったまま自分撮りをすることも可能になります。このあたりも撮影スタイルに大きく影響する部分ですので、使い方をよくイメージされると良いと思います。
 最後のWi-Fiは、最近の機種では標準装備に近くなった機能の一つだと思います。とはいえ、撮影スタイルによっては全く使わない方もいます。Wi-Fiによって、撮影データを直接スマートフォンやパソコンに送ったり、スマートフォンの画面を使ったリモート操作が可能となります。高機能なリモコン代わりにすることもできますので、旅先での記念撮影などでは便利な機能です。なお、Wi-Fiに対応していなくても、無線LAN内蔵メモリーカードで、データ転送は可能です。

ポイント4:操作性については?
 高級コンパクトの多くは、1つ以上のコマンドダイヤルやモードダイヤルを搭載しているものがほとんどです。また、ボタンも比較的多く、機能のカスタマイズに対応しているものも少なくありません。ここでの注意ポイントとしては、デジタル一眼レフやミラーレスカメラと共用するかどうか、という点です。高級コンパクトのインターフェースは、レンズ交換式カメラに準じて設定されているものが多いので、デジタル一眼レフのメーカーと合わせた方が迷いにくくなります。とはいえ、このあたりは機種ごとにも違ってきますので、やはり店頭で確認されることをお勧めします。
 また、最近は液晶モニターでのタッチ操作に対応した機種も増えてきました。タッチパネル搭載機でもボタンやダイヤルだけで操作可能ですが、慣れると直観的な操作ができるようになりますので、もしタッチ操作に対応した機種を選ばれたなら、いろいろとチャレンジされると良いと思います。

ポイント5:旧機種でもいい?中古ではダメ?
 基本的には、現行機種の新品から選択されることをお勧めします。レンズ交換式カメラと比較すると、高級コンパクトカメラの旧機種が店頭に並んでいる期間はそれほど長くはありません。実質的な後継機であっても、あえて別シリーズとすることで併売されることもあります。しかし、まだデジタルカメラの進化スピードははやく、できるだけ現行機種にした方が、末永く飽きずに使うことができると思います。
 また、高級コンパクトカメラの場合、レンズ交換式カメラと比較すると耐久性の点で一歩譲る傾向にあります。たとえ安かったとしても、目に見えない部分で酷使されていることもありますので、よほど素性が明らかでない限り新品購入をお勧めします。

 以上、5つのポイントに沿って高級コンパクトの選び方について整理しました。ここではあえて描写性能の違いについては記載しませんでしたが、それは高級コンパクトとして位置付けられている機種は、いずれも一般的なコンパクトカメラと比べ高い描写力を持っているからです。
 とはいえ、とくに描写力を重視されるのであれば、上記でも記載しました通り単焦点レンズモデルからの選択をお勧めします。また、ズームレンズモデルであれば、キヤノンのPowerShotG1X Mk2ソニーのDSC-RX100M2が頭一つ分抜き出ています。このあたりは、「デジカメ徹底レビュー」や「ここまで来た!高級コンパクトの高感度性能」などもご参照いただければと思います。

関連記事:「お勧めの高級コンパクト 2014年4月版

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高級コンパクトの選び方~購入にあたって注意すべきポイント」への2件のフィードバック

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  2. ピンバック: デジタルカメラのトレンド | monoxデジカメ比較レビュー

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