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特集 キヤノン PowerShot G1X
1.キヤノン PowerShot G1Xの位置づけと概要 |
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キヤノン PowerShotG1X
by Inaba Kunio
大型センサーを搭載した究極のG
評価:5.0
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フラグシップ・コンパクトとしてのGシリーズPowerShot Gシリーズは、初代のG1が2000年に登場して以来、ほぼ毎年モデルチェンジが行われてきた。初代から数えて10代目となるG12が発売されたのは2010年10月であったが、その後まる一年が経過しても、後継機の話は出てこなかった。もちろん、いまだ被害の全貌でさえ確定できていない東日本大震災や、その後に起きたタイでの洪水被害が影響していることは想像できたものの、一方でミラーレスカメラの快進撃が進んでいる状況の中で、GシリーズはG12で打ち止めになるのではないかと推測する声も、決して少なくはなかった。G1Xがリリースされたことで、「GシリーズがG12で終了する」という推測は、幸いにもはずれていたことが明らかとなった。しかし、実際にG1Xを手にしてみると、その推測が100%はずれていたわけではないことに気付かされる。つまり、G1Xは確かにGシリーズの遺伝子を受け継いでいるものの、G12までとは異なるジャンルの製品に仕上がっているのである。言い換えれば、フルモデルチェンジをさらに超える変化、ということになるかもしれない。 キヤノンには、一眼レフのサブカメラとしての使い方を想定したコンパクトカメラとしては、PowerShot Sシリーズと、このGシリーズの2ラインがある。Sシリーズは、どちらかといえば一眼レフと一緒に持ち歩くことも含めた「サブカメラ」であるのに対し、Gシリーズは一眼レフの代替機としての役割を視野に入れた「サブカメラ」となっている。たとえば旅行に行くときに、一眼レフと一緒に持っていき、食事などのちょっとした外出時に使うカメラがSシリーズとすると、そもそも旅行に1台だけしか持っていけない時のカメラがGシリーズ、というイメージである。 そのため、同じ「サブカメラ」といえども、Sシリーズは小型軽量であることも重視しているのに対し、Gシリーズは基本的にどのようなシーンでも対応できることが期待されるため、結果的に重装備カメラとなっている。実像式光学ファインダーやバリアングル液晶の搭載、アクセサリーシューの装備や直感的に操作できるダイヤル類のインターフェースなど、まさにフラグシップ・コンパクトカメラがGシリーズなのである。 究極のGシリーズ、G1Xの登場とはいえ、Gシリーズが登場してからの12年間で、フラグシップ・コンパクトをめぐる環境も大きく変わってきた。ミラーレスカメラを含めたレンズ交換式カメラの価格が急速に低下する一方で、携帯電話やスマートフォンに追い上げられた普通のコンパクトカメラが、機能や描写力をレベルアップさせてきた。そうした中、従来のGシリーズの立ち位置も徐々に微妙になっている。描写力でレンズ交換式カメラのレベルに到達できていないにもかかわらず、サイズ面では「コンパクト」ではないカメラ、ややもすれば小型のミラーレスカメラと同等レベルのカメラというGシリーズでは、市場の理解が得られにくくなっている。 今までのGシリーズの「中途半端」な立ち位置を変え、レンズ交換式カメラに肉薄できる描写性能を持ったフラグシップ・コンパクトとしての方向に大きく舵を切り、文字通り「究極のGシリーズ」を目指したのがPowerShot G1Xなのである。 フルモデルチェンジを超えた「G」G1Xは、G12からどう変わったのか。実際に比較するのに先立って、まずは仕様上の違いをチェックしたい。下記の表は、G1XとG12の主要スペックを比べたものである。これを見ると、G1Xが大きく変わった点は、次の4点である。
【G1XとG12の比較】
レンズ一体式カメラの強みデジカメが急速に普及し始めた頃、レンズ交換式カメラのシェアは低下していくのではないか、という見方があった。ネオ一眼のように、高倍率レンズを搭載したカメラにすれば、イメージセンサーに最適化したレンズとすることができるだけでなく、ゴミ問題等のレンズ交換に伴う課題もかなり解決できる。そもそも一眼レフカメラで、レンズ交換が必要なシーンがどれだけあるだろうか、という本質的な問いを含んだ見方であったが、実際のその後の推移は、フィルム時代以上にレンズ交換式カメラの普及が進んだ。しかし、これだけレンズ交換式カメラが拡がっている中で、いやむしろ拡がっているからこそなのかもしれないが、カメラと一緒にセットになったズーム以外のレンズを使ったことがある方の割合は、かなり低いだろう。言い換えれば、そこそこの倍率のレンズを付けた描写力の高いカメラであれば、必ずしもレンズ交換ができる必要はないのである。 おそらく、キヤノンとしては、いずれ参入することになるミラーレス分野にどのようなスタンスで臨むのかを決める試金石としての役割もG1X担わせているのだろう。もし、G1Xのようなカメラが市場に受け入れられれば、レンズ交換式ミラーレスカメラは、エントリー機ではなく、より上級機の分野に軸足を置いて投入されるのではないだろうか。 それでは究極の「G」シリーズは、一眼レフのサブカメラとして、どのように変わったのか。以下、順次チェックをしていきたい。 |