【一口コラム】 光学50倍ズームのネオ一眼
現行のレンズ固定式デジタルカメラが持っている最大倍率のズームレンズは光学50倍で、富士フイルムのFinePixSL1000、キヤノンPowerShotSX50HS、ソニーサイバーショットDSC-HX300の3機種だけとなります。光学50倍ズームとは、広角端で写した画像のわずか0.4%の面積を画面いっぱいに撮影することができるということです。これだけの高倍率が、実用的なものとして提供されるということは、少なくともフィルム時代には考えられなかったことでした。
もともと富士フイルムは、ネオ一眼に力を入れてきたメーカーです。現行機種を見ても、FinePixHS50EXR、FinePixS8200、FinePixSL1000、X-S1の4機種が揃えられており、いかに力が入っているかを物語っています。
FinePixSL1000はFinePixSL300の後継機であり、本年1月にFinePixHS50EXRと共に海外で発表されました。SL300は2012年8月の発売開始ですので、比較的早いタイミングでの後継機投入となります。なお、SL300も現時点では生産継続中ですので、しばらくは併売されるものと思われます。
FinePixHS50EXR(左)とFinePixSL1000(中)、FinePixS8200(右)。サイズは異なりますが、ミニ「デジタル一眼レフ」といった共通デザインです。
FinePixSL300からの主な進化ポイントは、
- イメージセンサーがCCDからCMOSに変わるとともに、有効画素数も1400万画素から1620万画素へと高画素化されました。
- レンズの望遠端が720mm相当から960mm相当へと伸ばされています。レンズの明るさも、開放F値がF3.1-5.9からF2.9-6.5へとわずかに明るくなっています。
- RAWでの撮影が可能となりました。
- 電子ビューファインダーは0.2型のままですが、20万ドットから92万ドットへと高精細化されました。
- 液晶モニターが46万ドットから92万ドットへと高画素化されました。また、固定式から上下チルト稼働可能なものに変わっています。
- 連写性能も8コマ/秒から10コマ/秒に強化。
- HDまでだった動画機能が、フルHD(60fps)対応に拡張されました。
- ボディサイズはほぼ同じですが、重さは150g程度増えています。
といった点で、イメージセンサーやレンズだけでなく、全般的に機能強化されています。
FinePixSL1000の主な仕様を、HS50EXRやS8200と比較すると、次のとおりとなります。
【FinePixHS50EXR、FinePixSL1000、FinePixS8200の比較】
機種名 |

FinePixHS50EXR |

FinePixSL1000 |

FinePixS8200 |
イメージ
センサー |
有効1600万画素
1/2型CMOS |
有効1620万画素
1/2.3型CMOS |
レンズ
(35mm換算) |
24-1000mm相当
F2.8-5.6 |
24-1200mm相当
F2.9-6.5 |
24-960mm相当
F2.9-6.5 |
手ブレ補正 |
光学式 |
感度 |
ISO100-3200 (拡張でISO12800) |
ISO100-12800 |
シャッター速度 |
1/4-1/4000秒 |
1/4-1/1700秒 |
光学ファインダー |
0.26型92万ドット |
0.2型92万ドット |
0.2型20万ドット |
液晶モニター |
3型92万ドット |
3型46万ドット |
連写速度 |
11枚/秒 |
10枚/秒 |
動画記録 |
1920x1080/60fps |
バッテリー |
NP-W126 約500枚 |
NP-85 350枚 |
単3形電池4本 ニッケル水素で約500枚 |
外部端子 |
USB、HDMImini |
その他機能 |
バリアングル液晶/RAW対応 |
チルト液晶/RAW対応 |
- |
外形寸法 |
134.9x101.3x145.9 mm |
122.7x88.6x122.6 mm |
122.6x86.9x116.2 mm |
質量
(電池,カード含) |
約808g |
約659g |
約670g |
発売時期 |
2013/2 |
2013/2 |
2013/1 |
実売価格
(2013/3時点) |
4万円前後 |
3万円強 |
2万5千円前後 |
発売開始時点の実売価格は、FinePixSL300が2万5千円前後でしたので、機能が強化された分、やや高めでのスタートとなります。ちなみに現時点のSL300実売価格は1万8千円前後ですので、1万円強の差があります。
FinePixSL1000(左側)とHS50EXR(右側)。基本的なデザインは踏襲していますが、サイズと重さが一回り違います。
FinePixSL1000(左側)とHS50EXR(右側)。液晶パネルは同じ3型92万ドットですが、HS50EXRの2軸バリアングルに対し、SL1000は上下チルト稼働となります。また、電子ビューファインダーも、HS50EXRの方が大型のパネルが使われています。
FinePixSL1000(左側)とHS50EXR(右側)。ズーム操作は、HS50EXRのマニュアル方式に対し、SL1000は電動式になります。このあたりは好みが分かれるところだと思います。
富士フイルムの特徴は、「ネオ一眼の中から一番マッチする製品」を選択できるだけのラインアップの幅かもしれません。X-Pro1やX-E1など、レンズ交換式カメラも強化していますが、引き続きネオ一眼にも力を入れ続けてもらいたいと思います。
(2013年 3月 7日 記)
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