チルト液晶を搭載したフルサイズ・デジタル一眼レフ 【ニコン D750】
ニコンから新型のフルサイズ・デジタル一眼レフ、D750が正式発表となりました。位置づけ的にはD810(実機レビュー)とD610の間となっていますが、実質的にはD610/D600(実機レビュー)の後継機種であると言えます。D610(2013年10月発売)はD600(2012年9月発売)のマイナーチェンジモデルであったのに対し、今回登場したD750はモノコック構造のボディに変わるなど、フル・モデルチェンジとなっています。メーカーによると、ハイアマチュアやクリエイティブに感度の高い層などにターゲットが当てられているようですが、多機能で比較的買いやすい価格帯であることから、かなり幅広い層にアピールする実力を持っているように思います。
ニコン D700。2008年7月発売開始で有効1210万画素のフルサイズセンサーを搭載していました。発売時の実売価格は30万円程度であり、フルサイズのベストセラー機となりました。
それではD750の特長について、主なポイントを見てみたいと思います。
- イメージセンサーは新設計の有効2432万画素フルサイズCMOSセンサーです。ちなみにD610は有効2426万画素ですのでちょっと画素数が増えたように感じますが、静止画の最大サイズはどちらも6016x4016で同じです。
- 画像処理エンジンはD810と同じEXPEED 4を搭載しています。なおD610ではEXPEED 3でした。
- 対応しているISO感度は、標準でISO100-12800、拡張でISO50-51200で、D610よりも1段分高感度側に広がっています。
- オートフォーカスは新設計のCAM3500 IIが搭載されています。これはD810のCAM3500FXをベースにしたものと思われ、低感度側では-3EVでもAFが動作します。
- 動画撮影もフルHD(60p)に対応しており、D810レベルに強化されています。また、撮影中に絞り設定を滑らかに調整できる「パワー絞り」や、外部HDMIレコーダーへの非圧縮映像出力とカメラ内メモリーカード同時記録、「風切り音低減」や「録音帯域」の設定など、高音質な動画撮影を実現する機能を強化しています。
- 液晶モニターは3.2型123万ドットで、D610のRGBタイプからRGBWタイプに進化しています。また、フルサイズ機としては初となる可動式液晶モニターとなっています。上側90°、下側75°まで開くことが可能で、3軸ヒンジ構造により上向き展開時にも接眼部に遮られてモニターが見えにくくなることがなく、下向き展開時にも、三脚に取り付けたままでスムーズに展開することができます。
- ボディ設計が一新され、D3300(実機レビュー)やD5300(実機レビュー)で採用されたモノコック構造となっており、高い強度と剛性を保ちながら小型軽量化を実現しています。前ボディとボディ前面カバーには炭素繊維複合素材が、上面カバーと背面カバーにはマグネシウム合金が使われています。
- ボディの薄型化により、より深いグリップとなっています。防塵防滴性能もD810と同等レベルが確保されています。
- SDタイプのダブルスロットは、D610に引き続き採用されています。
- 新たにWi-Fiが内蔵されました。スマートフォンによるリモート操作にも対応しています。
- 連写性能は、D610の6コマ/秒から6.5コマ/秒へと強化されています。連続撮影可能枚数は、D610の14コマに対し、D750では15コマ(いずれもロスレス圧縮14bitRAW)と、ほぼ同等レベルであると思われます。
- オプションでマルチパワーバッテリーパックMB-D16も用意されています。
D750(左側)とD610(右側)。D750はD610の上位機の位置づけですが、クラス的には概ね同等と見てよいと思います。正面から見たボディデザインも踏襲されており、インターフェースも共通しています。
D750(左側)とD610(右側)。液晶モニターはどちらも3.2型ですが、D610の92万ドットに対しD750ではRGBWの122万ドットになるとともに、上側90°、下側75°のチルト可動にも対応しています。ニコンのフルサイズ機で可動液晶を採用したのはD750が初となります。
D750(左側)とD610(右側)。ボディ上面のレイアウトも概ね共通ですが、D750ではボディ部が薄型化されたことにより、グリップ部分の深さが大きくなっています。このことにより、ホールド性能が向上しています。モードダイヤルには「EFFECTS」の項目が追加されており、D750で強化されたスペシャルエフェクトモードに対応しています。
【D750とD810、D710の比較】
機種名 |

D810 |

D750 |

D610 |
イメージ
センサー |
有効3635万画素 フルサイズ(35.9mmx24.0mm) CMOSセンサー |
有効2432万画素 フルサイズ(35.9mmx24.0mm) CMOSセンサー |
有効2426万画素 フルサイズ(35.9mmx24.0mm) CMOSセンサー |
画像処理 エンジン |
EXPEED 4 |
EXPEED 3 |
高感度性能 |
ISO64-12800 拡張でISO32-51200 |
ISO100-12800 拡張でISO50-51200 |
ISO100-6400 拡張でISO50-25600 |
連写性能 |
6コマ/秒 |
6.5コマ/秒 |
6コマ/秒 |
動画 |
フルHD(60p) |
フルHD(30p) |
ファインダー |
ペンタプリズム 視野率100% 0.7倍 |
シャッター |
1/8000-30秒 |
1/4000-30秒 |
オートフォーカス ユニット |
CAM3500FX
51点(15点:クロス、11点:F8対応)
-2〜+19EV |
CAM3500 II
51点(15点:クロス、11点:F8対応)
-3〜+19EV |
CAM4800
39点(9点:クロス、7点:F8対応)
-1〜+19EV |
バッテリー |
EN-EL15 1200枚 |
EN-EL15 1230枚 |
EN-EL15 900枚 |
インター フェース |
USB、HDMI |
USB、HDMI、Wi-Fi |
USB、HDMI オプションでWi-Fi対応 |
液晶モニター |
3.2型123万ドット(RGBW) |
3.2型123万ドット(RGBW) チルト可動 |
3.2型92万ドット |
サイズ |
146 x 123 x 81.5mm |
140.5 x 113 x 78mm |
141 x 113 x 82mm |
重さ |
980g/880g |
840g/750g |
850g/760g |
発売時期 |
2014年7月 |
2014年9月 |
2013年10月 |
実売価格 ()内は当初 |
290,000円前後 (320,000円前後) |
210,000円前後 |
150,000円前後 (180,000円前後) |
3軸方式のチルト可動液晶を搭載した点もD750のポイントです。それでもD610よりもボディ厚を薄くできている点は素晴らしいと思います。ファインダーや三脚への干渉にも対応しています。
D750の発売は9月25日の予定で、すでに予約受付も始まっています。ボディ単体で21万円前後、24-85mmVRレンズキットで26万円前後、24-120mmVRレンズキット(10月中旬予定)で28万円前後となっています。D600登場時で20万円前後でしたので、消費税アップ分を考えると概ねD600と同等レベルでのスタートとなりそうです。
D750は価格面だけでなく、機能面でも「はじめてのフルサイズ」機として求められる要素をすべて備えています。ミドルクラスのフルサイズ機として、極めて完成度が高いデジタル一眼レフであり、かなりの人気機種になるものと思われます。すでにD610は15万円前後で購入可能となっていますが、描写性能や機能面での進化を考えると、文句なくD750の選択をお勧めします。
(
by Inaba Kunio)
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