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特集 PowerShotS110
キヤノン PowerShotS110 ~熟成した高級コンパクトの先駆者 |
キヤノン PowerShotS110
by Inaba Kunio
熟成した高級コンパクトデジカメの先駆者Sシリーズ 評価:5.0
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1.キヤノン PowerShotS110の位置づけと概要S100の熟成モデル2009年10月に登場したPowerShotS90の末裔、PowerShotS110がPowerShotG15とともにリリースされました。前機種となるPowerShotS100の国内発売が2011年12月でしたので、1年弱での世代交代となります。PowerShotS95からS100へは、フルモデルチェンジともいうべき変化がありました。イメージセンサーが1/1.7型CCDから1/1.7型CMOSに変わるとともに、レンズも28-105mmF2-4.9(35mm換算)から広角側と望遠側の両方の焦点距離を伸ばした24-120mmF2-5.9へと換装されました。その他にも、フルHD動画撮影への対応、連写性能の向上、GPSの搭載など、最新の技術をふんだんに詰め込んだコンパクト高級コンパクトがPowerShotS100でした。 初代PowerShotS90 今回、S100からS110への進化内容をみると、S90からS95への進化と同様に、どちらかといえばマイナーモデルチェンジによる熟成化と言えるかもしれません。イメージセンサーやレンズなどの基本性能は前機種を踏襲し、機能面では液晶パネルのタッチセンサー化とWi-Fi機能を搭載する一方でGPS機能が省略されています。また、デザインもやや直線を強調したものへと変えられ、ボディカラーは今までのブラック、シルバーに加えホワイトモデルがラインアップに加えられました。 PowerShotSシリーズの進化
あらためてPowerShotS110の仕様をみると、小型サイズの高級コンパクトに期待される機能や性能は、すべて搭載されていることがわかります。今回省略されたGPS機能にしても、Wi-Fi機能によるスマートフォンとの連携で十分カバーが可能です。パナソニックのLUMIX DMC-LX7や11月に登場が決まった富士フイルムXF1、オリンパスXZ-2等の各機種は、ある意味で同じポジションと言えるのかもしれません。 こうした中、描写性能という点で一歩抜きん出たのがソニーのDSC-RX100です。ぎりぎりポケットに入れて持ち運べるサイズの中に、1型センサーを搭載した機種が登場することは、おそらく各社とも想定していなかったのではないかと推測されます。DSC-RX100が登場して以降、これらコンパクトカメラの価格がやや低下したのも、「DSC-RX100ショック」のあらわれのように思います。 とはいえ、PowerShotS110をはじめとする小型高級コンパクトの魅力がなくなったかと言えば、必ずしもそうではないと思います。機動力や機能面などカメラとしての総合力をバランスよく目配りされているということは、多くのユーザーにとって安心して選択できることを意味するからです。 まずは購入検討に加えるべきデジカメ以前、PowerShotS95に対して、「レンズ交換式デジタルカメラのサブカメラを選ぶとき、まず検討すべきデジカメ」と評価しました。PowerShotSシリーズは、サブカメラが持つべき小型軽量ボディ、常用域をカバーするズームレンズ、きちんと活用できる画像、という3つの条件を満たす機種だからです。PowerShotS110に対しても、基本的には同じ評価が成り立つと私は考えています。この2年間で各社から魅力ある機種が登場してきていますが、PowerShotS110の持つバランスの良さは、PowerShotS95と比較しても、さらに熟成されているからです。それではPowerShot S110の実力を具体的にチェックしていくことにします。しばらくお付き合いをお願いいたします。
2.キヤノン PowerShotS110を開封し外観をチェックキヤノン Canon PowerShotS110を開封するPowerShot S100から約1年ぶりに登場した後継機PowerShotS110。イメージセンサーやレンズ周りは全機種を踏襲していますが、タッチパネルやWi-Fiの搭載、そしてデザインの変更と合わせて新たにホワイトモデルが追加されました。市場での販売価格は、約4万円強でのスタートとなりました。PowerShotS100と比べると、概ね5千円程度安価となっています。GPSは省略されたものの、全体に機能アップしているにもかかわらず廉価になっている点は、やはりソニーDSC-RX100の影響かもしれません。 今回テスト機を購入するに当たり、いつも通りカラー選択に迷いました。せっかくなのでホワイトモデルも検討しましたが、結果的にいつも通りブラックモデルを選びました。店頭で実際に見ていただけるとわかりますが、ホワイトモデルもしっかりと塗装がされており、高級感が感じられます。
紫色を基調としたパッケージは、前機種のS100やS95のものと同じデザイン。箱には「日本国内向け」と記載されています。
パッケージの上段には、取扱説明書やCD-ROM等が入っており、下段に本体やケーブル、ストラップ、バッテリー等が格納されている。上側にある白い包みが本体。
同梱されている付属品。左上より取扱説明書、ソフトCD、バッテリーチャージャーCB-2LX、バッテリーNB-5L、インターフェースケーブルIFC-400PCU、リストストラップWS-DC11。 Sponsored Links バッテリー等の付属品をチェックPowerShot S110のバッテリーは、前機種であるPowerShot S100等多くの機種で使われているものとなります。
NB-5L用バッテリーチャージャーCB-2LX。充電には125分が必要となります。
コンセント用のプラグ部分は回転して格納できます。接続するコンセント側にスペースが必要となりますが、可搬性の点でメリットとなります。チャージャーは中国製。
バッテリーパックNB-5L。容量は1120mAhで、静止画であれば約200コマ、動画であれば約40分の撮影が可能です。セルは日本製ですが、バッテリーパック全体は中国製。
付属のリストストラップWS-DC11。携帯電話用のものとほぼ同じです。
付属するインターフェースケーブルIFC-400PCU。パソコンやプリンターとの接続に使用します。 Sponsored Links PowerShot S110の本体外観をチェックブラックボディの表面は指紋が付きにくい塗装が施されており、高級感を感じます。
ボディ前面。キヤノンらしいシンプルなデザインとなっています。ボディ両端部分は切り落とし的な加工となっており、力強い印象を受けます。
ボディ液晶画面側。基本的なレイアウトは前機種S100とほぼ同じです。親指部分のゴムが大きくなっています。
ボディ上面。シャッターボタンがシルバーからブラックに変わっていますが、ダイヤルやボタン類の配置も前機種と同じです。
ボディ底面。三脚用の穴は金属製で、レンズ光軸上に配置されています。向かって左側はバッテリー室の蓋で、この中にバッテリーとメモリーカードが格納されます。カメラ本体は日本製。
ボディ左側面。右上に見えるのはストラップ取付部です。ストラップ取付部は反対側にもありますが、付属するリストストラップは片吊用のものとなります。
ボディ右側面。こちら側には外部接続端子が格納されています。その上に見えるのがストラップ取付部です。
ロゴは刻印された上に白いインクが流されています。ロゴの右側は、セルフタイマーランプやオートフォーカス補助光等として機能するランプです。ロゴとランプの上にある2つの穴はステレオマイクとなります。
レンズ鏡胴まわりにあるリングコントロール部の滑り止めパターンが変わっており、操作感が向上しています。
ボディ上面の右側。モードダイヤルには「ムービーダイジェストモード」が追加されています。これは、静止画撮影時に前の2~4秒分が動画として記録され、1日分をまとめてファイル化されるものです。また、新たにWi-Fiが追加されたため、インジケータも配置されています。無線LANで行えることは基本的にIXY1と同じで、パソコンやプリンターとの接続やスマートフォンでのコントロール、Web等へのアップロード等が可能です。
外部端子カバーの内側。A/V OUTとDIGITAL兼用端子とHDMI端子となります。S100と同じです。
液晶側のメインコントロール部です。ボタンやダイヤル類はS100と同じです。右下の丸型部分はコントローラーホイールとして機能します。写真では見えづらいですが、親指部分のゴムにある3つの穴はスピーカーです。
バッテリー室の蓋を開けた状態です。メモリーカードの挿入方向ガイダンスが貼付されています。
バッテリーとメモリーカードを挿入しつつある状態。メモリーカードのラベル部分は液晶側を向きます。
ストロボをポップアップさせた状態。ストロボ自体はストロボのモードによって自動的にポップアップ・格納されます。
電源を入れた状態です。写真はレンズを広角端にしています。
レンズを望遠端にした状態です。この時にレンズ長は一番長くなります。
液晶パネル。静電容量方式タッチパネル化されています。すべての操作はダイヤルやボタン類だけでも可能です。液晶パネルの視認性は良好です。 PowerShotS95との比較PowerShotS110のデザインは、むしろ前々機種であるPowerShotS95に似ています。ここでは両機種の外観を比較してみました。
PowerShotS110(左側)とPowerShotS95(右側)。デザインテイストは似ていますが、より直線的なデザインに変わっています。また、モードダイヤル部分がボディ上面に出ています。
液晶パネル側。基本的に同じですが、モードダイヤルがボディ上面に突き出ている点が変わっています。
ボディ上面。レンズ鏡胴部にあるコントローラーリングの滑り止めパターンが変わっています。
内蔵ストロボをポップアップさせた状態。ポップアップ量は両機種ともほぼ同じ高さとなります。 Sponsored Links 3.キヤノン PowerShotS110の描写性能はどうか?描写力チェック1:高感度性能PowerShotS110の基本感度はISO80で、ISO12800までの設定が可能となっています。PowerShotS100ではISO80からISO6400まででしたので、1段分設定可能幅が広がっています。高感度性能については、撮影メニューの中に「高感度時NR」の項目があり、「弱」「標準」「強」の3段階で設定できます。PowerShotS110はRAW撮影も可能ですので、撮影後にパソコン上でノイズリダクション処理をかけることもできます。なお、RAWまたはRAW+JPEGでの撮影時には、自動的に「標準」での撮影となります。 下記のサンプルは、各ISO感度別にテスト撮影を行ったものとなります。高感度時ノイズリダクションを標準に設定したものでチェックすると、ISO800まではほとんどノイズを感じませんが、ISO1600あたりから暗部などでノイズが見えてきます。ISO3200になるとそれなりにノイズが目立つようになってきますが、ぎりぎり実用範囲に入っていると思います。ISO6400以上になるとかなりノイズが増え解像感の低下も感じられますが、縮小するなどの使い方によっては、活用可能だと感じました。 高感度ノイズリダクションを「標準」にすると、かなりノイズ感は改善されますが、解像感にはそれほど影響は感じられませんでした。「強」にすると、さらに高感度ノイズは低減化されましたが、解像感の低下も目立ってきます。なお、高感度ノイズリダクションは、ISO1600以上で強くかかってくるように感じました。 下記のサンプルは画像の一部をほぼ等倍で切り出したものですが、クリックすると元画像が表示されますので、あわせて参照していただければと思います。
ISO80(「弱」「標準」「強」) Sponsored Links 描写力チェック2:歪曲収差PowerShot S110のレンズは35mm換算で24mmから120mmの光学5倍ズームのため、高級コンパクトの範疇ではややズーム域が広いレンズとなっています。レンズ自体は前機種のPowerShotS100と同じものと思われます。PowerShot S110には「ゆがみ補正」等の項目はありませんので、必要であれば撮影後にソフトウェアで補正をかけることになります。 下記のサンプルは、広角端、標準域、望遠端で撮影したものです。いずれも絞り開放となっていますが、歪曲収差、周辺光量不足とも良好に補正されています。 歪曲収差に関しては、広角端ではわずかに樽型収差を確認することができますが、24mm相当の画角を考えると気にならないレベルであると思います。その後、望遠側に移るにつれ補正がされていき、標準域を超えたあたりでほぼ完全に補正されています。 焦点距離:5.2mm(35mmサイズ換算24mm) 焦点距離:10.8mm(35mmサイズ換算50mm) 焦点距離:26mm(35mmサイズ換算120mm) Sponsored Links 描写力チェック3:解像力レンズ固定式のカメラでの解像力テストでは、イメージセンサーとレンズの両方の実力が試されます。いつもの通りISO12233準拠チャートを使用して解像力チェックを行いましたが、結果は、コンパクトカメラとしては高い解像力を示しています。35mm換算で24mmの広角端では、開放から高い解像力を示しています。わずかにモアレの影響が出ているものの、概ね2400本あたりまでラインを視認することができました。望遠側に移るにつれ、わずかに解像感の低下が認められましたが、望遠端でも2100本のラインを確認することができました。 画像周辺部については、全般的に鮮明度の高い画像となっていますが、やはり1段程度絞るとしっかりとした画像となります。 実際のチャートは画像をクリックすると表示されるので、ぜひ直接確認していただければと思います。
5.2mm域(35mmサイズ換算24mm) F2.0 Sponsored Links 4.結局、キヤノン PowerShotS110は「買い」か?独断 素晴らしい! ポイント
独断 もう一息! ポイント
Sponsored Links 付録1.製品仕様からみた PowerShotS110の特長
Sponsored Links 付録2.発売前のファーストレビュー【一口コラム】無線LANを搭載した小型高級コンパクトキヤノンからPowerShotS100の後継機、PowerShotS110が正式発表となった。店頭予想価格は4万9800円となっており、10月中旬に発売開始される予定である。
PowerShotS110(左側)とPowerShotS100(右側)。S100で新設された前面グリップがなくなったのが目立つものの、全体としてのデザインはSシリーズを踏まえたものとなっている。 PowerShotS110(左側)とPowerShotS100(右側)。液晶モニターがタッチパネルとなったが、ボタンやダイヤル類はS100とほぼ同じ。 PowerShotS110(左側)とPowerShotS100(右側)。イメージセンサーの仕様は同じだが、S110では新たに設計されている。画像処理エンジンはDIGIC5と同じ。 主な仕様についてS100(2011年12月発売)と比較すると、次のとおりである。 【S110とS100の比較】
なおボディカラーは、S100ではブラックにシルバーが追加されたが、S110ではさらにホワイトも加わっている。 ソニーのDSC-RX100が登場して以来、小型の高級コンパクトカメラの立ち位置が難しくなっている。PowerShotS110はマイナーバージョンアップモデルとして正統進化しているが、次の「飛躍モデル」の登場も期待したい。 (9月19日 記) |
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【キヤノン PowerShot S100 基本仕様】
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