年末恒例特別座談会
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多くのデジカメ新製品が登場した2013年も、残すところ1カ月をきりました。昨年9月のフォトキナ開催にあわせて大型新製品が多数発表されたこともあり、今年の前半はややゆっくりとしたペースでした。初夏あたりからは新しいコンセプトの製品もリリースされるなど、結果的に注目すべき一年だったと思います。
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§ 今年のデジカメのトレンドは? §《ひめ☆》 「みなさん、ごきげんよう。昨日は暖かかったですが、今日はまた朝から寒い日となりそうです。 昨年から始まった特別座談会は、おかげさまで人気記事の一つとなりました。今年も昨年に引き続き、座談会をはじめたいと思います。 まずはじめに、今年のデジカメのトレンドについて伺いたいと思いますが、いかがですか。」 トレンド1:高付加価値モデルへのシフトが加速《monox》「昨年9月に開かれたフォトキナではたくさんの大型新製品が登場しました。そのため、今年の前半はややおとなしい傾向だったように思います。1月末から開催されたCP+2013(紹介記事)ではコンパクトカメラの新製品は多かったものの、デジタル一眼レフやミラーレスカメラについては既存機を中心とした展示でしたので、少々がっかりされた方もいらっしゃったのではないかと思います。 しかし、2月後半からはソニーαNEX-3Nやα58、ニコンのD7100(製品レビュー)など、レンズ交換式カメラの新製品も徐々にリリースされはじめ、1年を振り返ると例年以上に注目すべき年になったのではないでしょうか。 そんな中、今年のトレンドをみると、まず第一に高付加価値モデルへのシフトが加速したということがあります。こうした傾向は昨年も見られましたが、今年は各社とも明確に方向性を転じたように思います。とくにコンパクトカメラでは、高級コンパクトやタフネスモデル、高倍率ネオ一眼など、特長のある製品が増えてきています。」 《リバティ》 「普通のコンパクトデジカメは各社とも苦戦しているようですね。メーカーの業績発表の場でも、予想以上に市場が収縮しているとの認識が示されていました。やはりスマートフォンの影響ですかね。」 《monox》 「そうだと思います。スマートフォンの製品アピールポイントの一つとして、カメラ性能が大きな位置を占めつつあるのも、こうした状況の裏返しかもしれません。実際にiPhone5S(製品レビュー)のカメラ性能は、1年前に登場したiPhone5(製品レビュー)と比べてもさらに描写性能が進化しており、日常的な記録用途であればこれで十分と感じられるのも当然だと思います。」 《太郎》 「私はもともとスマホで撮ることがほとんどです。職場の業務用デジカメを使うことはありますが、撮影自体が目的でないときにはスマホを使います。液晶画面が大きいですから、その場での確認も簡単です。撮った後は、自分のパソコンにメールで送ればOKですから。」 《monox》 「コンパクトカメラだけでなく、デジタル一眼レフやミラーレスカメラでも、描画性能や機能を重視したり、デザインに工夫をしたりといった製品が増えています。こうした傾向は、デジカメの進化と言う点では大きくプラスになると思います。」 トレンド2:Wi-Fi対応は標準機能に《monox》「機能の重視ということの一つの表れともいえますが、高級コンパクトやレンズ交換式カメラでは、Wi-Fi対応は標準機能になりつつあります。Wi-Fiを内蔵している機種が増えているだけでなく、オプション品でWi-Fi機能を付加できることは、ほぼすべての新製品で対応されてきています。ただし、Wi-Fi対応という点だけに注目するのではなく、Wi-Fiによってどのような機能が付加されているのか、ということも使い勝手の上で大切です。『デジカメによって異なるWi-Fi機能に注意』でも記載しましたが、画像データの転送機能だけなのか、それともリモコン機能にも対応しているのか。また、NFCを内蔵しているかも、持っているスマートフォンの機種によっては重要なポイントになってきます。」 《リバティ》 「Wi-Fiというと、Eye-Fiカードのように撮影データをパソコンに転送する機能が最初に頭に浮かびます。デジカメの液晶画面を使って転送する画像を選択したり、直接SNSにアップロードできたりと、だんだんと機能が強化されてきましたね。スマートフォンによるリモコン機能は、これまでのWi-Fi機能とは異なるジャンルのものだと思いますが、手元で画像を見ながら撮影できるのはとても新鮮に感じました。」 《monox》 「そうですね。実際に撮影できる画像を確認しながら、絞りやピント位置、ホワイトバランスなども手元のスマートフォン上で行えるデジカメもあります。今までの高機能リモコンでもここまでできるものはありませんでしたので、まさにWi-Fiによってデジカメに新しい機能を付加したと言えると思います。バッテリーの持ちやカメラ時代の反応速度などの課題もありますが、できればWi-Fiでのリモート操作にも対応している方が望ましいと思います。」 《ひめ☆》 「デジカメのトレンドとして、高付加価値モデルへのシフトと、Wi-Fi対応は標準機能の2つがあがりましたが、他にもありますか?」 トレンド3:価格下落は底を打った《monox》「これは昨年あたりからの傾向ですが、カメラ自体の単価が下げ止まったように思います。カメラ本体の高付加価値化が主な要因ですが、景気回復や円安傾向なども背景にあるかもしれません。一定水準で下げ止まるのは、ハードディスク装置をはじめとするコンピューター機器や家電製品などでもよくみられる傾向です。単純な価格競争から付加価値の差別化競争への転換がうまくいくかどうかが、市場の持続性を左右するのだと思います。その意味では、デジカメ産業にとってのここ数年は、極めて重要な時期と言えます。」 《太郎》 「価格の下げ止まりは、ユーザーにとっては好ましくないような気もします。」 《monox》 「より良いものをより安く購入したい、というのはユーザーにとっての基本的欲求だと思います。そうしたニーズがあるからこそ、デジカメも急速に発展し、価格も下がって買いやすくなりました。たとえば『現在の機能でいいから、もっと安く購入したい。』というニーズも少なくないと思います。だからこそ、スマートフォンのカメラがこれほど多く使われてきているのだとも言えます。ただし、安さだけを追求したようなデジカメが市場の大半を占めたり、あるいは逆にほとんど使わないような機能を山盛りすることで高止まりしたようなカメラだけ、というのでも困ります。大切なのはユーザーの多様なニーズに対応した幅広さをきちんと確保しつづけることだと思います。」 |
§ 分野別にみた今年の特徴は? §《ひめ☆》 「それでは、デジカメの分野別に、今年の特徴を話していただけますでしょうか。昨年と同様に、デジタル一眼レフ、ミラーレスカメラ、高級コンパクト、ネオ一眼の順でお願いします。」 デジタル一眼レフの特徴《リバティ》「まずデジタル一眼レフからですね。2013年に登場したデジタル一眼レフの新製品は、キヤノンからEOS KissX7(製品レビュー)とEOS KissX7i、EOS70D(製品レビュー)の3機種となります。ニコンからはD7100(製品レビュー)とD610、D5300(製品レビュー)、Df(製品レビュー)の4機種がリリースされました。ソニーからは厳密にはデジタル一眼レフではありませんが、従来のレンズを使えるカメラとしてα58が登場しました。リコーからはペンタックス・ブランドとして、K-50(製品レビュー)、K-3(製品レビュー)の2機種が登場しています。合計では10機種となりますので、2012年の15機種よりは少ないものの、2011年は5機種、2010年は11機種であったことを考えると、ほぼ平年並みの新製品が登場したことになります。」 《太郎》 「今年は後半に新製品が多かったですね。デジタル一眼レフのクラスとしてはどうでしたか?」 《monox》 「エントリーからミドルクラスの製品としては、キヤノンのEOS KissX7とEOS KissX7、ニコンのD5300、ソニーのα58、ペンタックスのK-50の5機種が該当します。とはいえ、これらの機種も従来のエントリークラスと比べると、描写力をはじめ基本性能はかなり強化されており、ミドルクラスに近いといえると思います。 上級クラスとしては、キヤノンのEOS70D、ニコンD7100、D610、Df、ペンタックスK-3の5機種です。このうち、ニコンのD610とDfはフルサイズのイメージセンサーを搭載しており、残りはAPS-Cサイズとなります。昨年はフルサイズ機が多くリリースされましたが、今年はD610はマイナーチェンジモデルであることを考えると、完全な新製品としてがDfのみとなりますので、少々さびしい気もします。」 《リバティ》 「昨年もそうでしたが、デジタル一眼レフの新製品を見ると、全体にカメラとしての基本性能が強化されてきていますね。」 《monox》 「そうですね。ミラーレスカメラと比べると、デジタル一眼レフはより高機能・高性能モデルへとシフトしてきているのが、ここ最近の傾向と言えます。光学ファインダーやクイックリターンミラーなど、構造的にどうしてもコスト高要因がありますので、価格にふさわしい機能を持たせるという方向で進化しているのだと思います。」 《ひめ☆》 「ありがとうございます。次はミラーレスカメラですが、今年の新製品はどうだったでしょうか?」 ミラーレスカメラの特徴《リバティ》「ミラーレスカメラの新製品では、オリンパスからはPEN E-PL6、PEN E-P5(製品レビュー)、OM-D E-M1(製品レビュー)の3機種が登場しています。キヤノンからは、今月中旬に発売予定のEOS M2があります。ソニーからは、NEX-3N(製品レビュー)、NEX-5T、α7(製品レビュー)/α7Rの4機種が、ニコンからは S1、J3(製品レビュー)、AW1(製品レビュー)の3機種、パナソニックからはLUMIX DMC-GF6(製品レビュー)、DMC-G6(製品レビュー)、DMC-GX7(製品レビュー)、DMC-GM(製品レビュー)の4機種が、富士フイルムからはX-M1(製品レビュー)、X-E2(製品レビュー)、X-A1の3機種が、最後にリコーからはペンタックス・ブランドのQ7(製品レビュー)がリリースされています。 合計では19機種ですので、昨年の17機種よりも増えています。」 《monox》 「ミラーレスカメラでは、新しい切り口のカメラが多く出てきたことに注目したいですね。オリンパスでは、デジタル一眼レフとミラーレスを統合した機種として、OM-D E-M1が登場しましたし、ソニーからは初のフルサイズ・ミラーレスとなるα7/α7Rがリリースされました。また、ニコンからはやはり世界初となる本格的なタフネス性能をもったミラーレス、AW1が登場しています。DMC-GX7やDMC-GMもパナソニックとしては新しいジャンルの製品となりますし、X-A1も富士フイルムとしては一般的なCMOSセンサーを搭載したはじめてのミラーレスとなります。ペンタックスのQ7も、今までのQシリーズよりは一回り大きいイメージセンサーを搭載したという点では、やはり新シリーズと言えると思います。」 《リバティ》 「キヤノンのEOS Mはブラッシュアップモデルに近いようにも見えますが、ちょっと見劣りがしていたオートフォーカス性能が大幅に強化されたようですから、登場が楽しみです。」 《monox》 「記事『ミラーレスカメラへの移行は止まったのか?』でも触れましたが、2008年の登場以来急成長を続けてきたミラーレスカメラも、踊り場に差し掛かったかのように見えます。しかし、各社の新製品を一つ一つ丁寧にみてみると、さらに大きな飛躍に向けた準備が着々と進められていることも実感します。今年の取り組みを踏まえ、来年はどのような新製品が登場するのか、期待が募ります。」 高級コンパクトの特徴《ひめ☆》「よろしいでしょうか。それでは次に高級コンパクトカメラについて、お願いします。」 《リバティ》 「まず新製品ですが、オリンパスからはSTYLUS1がリリースされました。カシオからは初の高級コンパクト、EXILIM EX-10が登場しています。キヤノンからは、PowerShotS120(製品レビュー)、PowerShotS200、PowerShotG16の3機種、シグマからはDP3 Merrill、ソニーからはDSC-RX1R、DSC-RX100M2(製品レビュー)、DSC-QX100(製品レビュー)、DSC-RX10の3機種、ニコンからはCOOLPIX A(製品レビュー)、COOLPIX P330(製品レビュー)、COOLPIX P7800(製品レビュー)の3機種、パナソニックからはLUMIX DMC-LF1(製品レビュー)、富士フイルムからはX20(製品レビュー)、X100S(製品レビュー)、XQ1の3機種、リコーからはペンタックス・ブランドのMX-1(製品レビュー)、リコーブランドのGR(製品レビュー)がリリースされました。合計すると単焦点レンズ搭載機が5機種、ズームレンズ搭載機が14機種で、計19機種となります。昨年は単焦点が3機種、ズーム機が6機種の計9機種でしたので、今年登場した高級コンパクトは昨年の2倍となりました。」 《monox》 「今年は、カシオも高級コンパクト市場に参入するなど、デジカメの中で一番の盛り上がりがあった分野だったと思います。昨年はソニーDSC-RX1(製品レビュー)のようにフルサイズのイメージセンサーを搭載した機種も登場しましたが、今年は1/1.7型センサーとズームレンズといった高級コンパクトの王道をいくような機種とともに、APS-Cサイズのものも多かったように思います。 イメージセンサーのサイズで見ると、APS-Cサイズのものは富士フイルムのX100SとシグマDP3 Merrill、ニコンCOOLPIX A、リコーGRの4機種、1型はソニーDSC-RX100M2とDSC-QX100、DSC-RX100の3機種、2/3型は富士フイルムのX20で、残りの10機種は1/1.7型CMOSセンサーとなります。」 《太郎》 「今年の高級コンパクトはどんな特徴がありましたか。」 《monox》 「高級コンパクトといってもだんだんとラインアップの幅が拡がってきています。その中で特徴的な傾向ということでは、まず電子ビューファインダーを内蔵した機種が出てきたことがあります。具体的には、パナソニックのDMC-LF1やニコンのCOOLPIX P7800、ネオ一眼としての側面もあるソニーDSC-RX10とオリンパスSTYLUS1が電子ビューファインダーを内蔵しており、これ以外にもオプションで対応するソニーDSC-RX100M2もあります。富士フイルムのX100Sや昨年登場したX100のようにハイブリッド型のファインダーを搭載している機種や、X20やキヤノンPowerShotG16のように実像式光学ファインダーを内蔵したものもあり、全体にファインダーに対して目配りがされたものが増えてきた印象を受けました。」 《monox》 「高級コンパクトのもう一つの傾向としては、レンズ性能が重視されてきているという点です。単焦点モデルが新たに4機種追加されるとともに、F2.8通しの高倍率ズームレンズを搭載した機種も、昨年登場したパナソニックDMC-FZ200(製品レビュー)に加えて、新たにソニーDSC-RX10やオリンパスSTYLUS1が登場しています。描写力はイメージセンサーとレンズ、画像処理エンジンによって決まりますので、より描写性能を重視する方向に高級コンパクトが進化しているということだと思います。」 《リバティ》 「ファインダー重視といった多機能性と描写力強化の両方の面で高級コンパクトデジカメも進化しているということですね。」 ネオ一眼の特徴《ひめ☆》「それでは、最後にネオ一眼です。今年のトレンドはいかがだったでしょうか。」 《リバティ》 「今年登場したネオ一眼では、オリンパスのSTYLUS1、ソニーのDSC-RX10、DSC-HX300、ニコンのCOOLPIX P520、パナソニックのDMC-FZ70、富士フイルムからはFinePixHS50EXR、FinePixSL1000、FinePixS8200ということで、計8機種となります。STYLUS1とDSC-RX10は、先ほどの高級コンパクトのジャンルでもノミネートされています。 昨年のネオ一眼も8機種がリリースされていますので、ほぼ例年並みだと思います。」 《monox》 「ネオ一眼は欧米市場でも根強い人気がありますので、各社とも毎年ブラッシュアップを施し熟成した機種が多いと思います。そうした中、STYLUS1やDSC-RX10のように明るい高倍率ズームレンズを搭載したものや、DMC-FZ70のように20mm~1200mm相当の光学60倍ズームレンズを搭載したものもあり、やはりネオ一眼としての広がりがさらに進んだ1年だったと思います。 とくに、STYLUS1で28-300mm相当F2.8、DSC-RX10では26-220mm相当F2.8の大口径高倍率ズームを搭載している点は注目すべきように思います。昨年8月に登場したDMC-FZ200も25-600mm相当F2.8のレンズを搭載していましたので、これに続く新しいトレンドです。DMC-FZ200では1/2.3型だったセンサーが、STYLUS1では1/1.7型、DSC-RX10では1型という大型センサーとなった点もポイントです。」 いずれにしても1200mm相当のズームレンズを搭載しているというのは、フィルム時代には思いもよろなかったことです。こうした製品が実用的なサイズでリリースされてきているのは、デジタルカメラの大きなメリットだと思います。」 次回以降に掲載の『中編』『後編』では、各社ごとの新製品の特徴や、今年1年間で発売開始されたデジタルカメラの中で評価すべき製品の選定を行っていますので、ご期待ください。 ( 編集: Inaba Kunio) |